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不利な状況からでも伊月はパスを出し続ける。
それでも一歩届かずFWは中々トラップすることが出来ない。
「すまん!」
これは伊月が悪いのではない。
明らかに裏への飛び出しが遅すぎるのが原因なんだ。
そのままラインを割ってしまい、またボールは相手のものになってしまう。
相手キーパーがゴールキックで前線に蹴り上げると辻井さんと俺の競り合いが始まった。
まず最初に跳んだのは俺だった。
身長も圧倒的に負けている俺は先に跳べばボールを取れると思ったからだ。
しかしそんな俺の考えなんて無駄にしてしまうくらい後に跳んだとは思えないほどの跳躍力を見せつけられあっさりと負けてしまった。
「なっ……!」
「俺には勝てない」
俺が思わず声をこぼすと自信満々な声でそう言われた。
しかしそのパスを津田がクリアした。
「ドンマイ!」
津田は俺を慰めるかのようにプレーで示した。
そのクリアしたボールをサイドで伊月がもらう。
伊月はドリブル突破を試みるが呆気なく弾き返されてしまい、ボールはそのままラインを割る。
「くそ!」
伊月はパスは上手いのだがドリブルはあまり上手くない。
スローインから始まり伊月はゴール付近に来た俺の姿を見る。
そのまま俺にクロスをしヘディングで見事に点を決めた。
「よっしゃー!」
俺はあまりの嬉しさに大声で喜んだ。
「俺パスうま!」
「パスだけな」
そんないつも通りの会話が続きこの練習は幕を閉じた。
結果は引き分けだった。
◯
「あー、引き分けだったかー」
「引き分けでも上出来だって」
練習帰りに伊月はため息をしながらそう言った。
「拓也のミスで二失点だろ?」
「それは悪かったて!」
伊月は俺に不満をぶちまけた。
「それにしても辻井さんすげーよな」
「確かに辻井さんも凄いけど広井さんもやべーぞ」
何故、辻井さんや広井さんのような人がこの学校に来ているのかがよく分からなかった。
あの二人なら強豪校でも十分やっていけそうなのにだ。
「広井さんって何であんな攻撃的なのにSBやってんだろな」
伊月は疑問に思いながら言う。
「それ前に本人に聞いたんだけどさ、僕は前よりも後ろから攻めた方が上手いんだ! らしいぜ。前のポジションはやりたくないんだってさ」
「なんじゃそりゃ。よく分かんねーな」
そんな話題で盛り上がる。
「あの、拓也さん!」
二人で話していると前から女の子の声が聞こえた。
見ると、小柄でサラサラした短い髪の子が立っていた。
凛と同じように美貌であった。
「拓也の彼女?」
「違っ!」
「じゃあまたねー」
何に気を使ったのか分からないが伊月は帰っていった。
「な、何?」
「拓也さん、話があります」
これが不思議な美少女との初めての出会いであった。