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幻の妹とデート

作者: 柴犬無双

 「10年後ここでまた会えますか?」

それは私が小学生2年生だった頃の話

夏のある日、学校の帰り道に近道しようと神社の裏道を通った時、その少女は急に現れた。

歳は私より少し小さい……そう6歳ぐらい

真っ白なワンピースに大きな麦わら帽子を被っていた

少女は話を続ける

 「10年後……2019年8月15日……良いかな……時間は朝8時で……」


 私は即座に頷いた。

理由は何だったのか判らない……ただの気まぐれだったのかもしれない。


 「嬉しい…楽しみにしてるね」

そう言い残すと少女はフッと消えた


そして今日

2019年8月15日の朝の7時50分。

私は約束の神社へとやってきている

天気は今にも雨が降り出しそうな曇り空

デートにはあまり良い日とは言えない。私は空を見上げてそう思った

そして視線を元に戻すと少女が目の前に立っていた

白いワンピースに大きな麦わら帽子はそのままだった

但し少女そのものは大きく成長している。16歳ぐらいか


「ちゃんと来てくれたんだ……嬉しい」彼女はそう言って抱きついた。いや抱きつこうとした

少女は私の体をすり抜けた

「正体…バレちゃったかな?」少女が悲しそうな声で言う


 「いや別に…」私は言った。それは本心だった

「薄々気がついてたよ」


「そっか…」彼女がニッコリ微笑む

笑顔が眩しかった。私は続けた

「さて今日は何をすればよいのですか?」


「デゼニーランド行きたい!!」と彼女が言った


私は笑い転げた。殺気を感じて少女を見上げるとかなり起こってるようだ

私は釈明する「いやいや予想外の答えだったからね」

そして私は手を差し出す「それではいざデゼニーランドへ」


「でもどうやって行くの?電車」と彼女が言った

「じゃーん」私は免許を取り出して見せびらかす「この日の為に取ったんだ」


彼女がパッと輝いた「本当に嬉しい!」

「まぁ本当は君じゃなくて未来の彼女の為だがな」心の中で私は呟いたが口には出さなかった



3時間後私達はデゼニーランドにいた

傍から見ればカップルと家族連れだらけのデゼニーランドで一人で遊んでる私はかなり奇妙に見えただろう。何せ彼女は普通の人には見えないのだから


彼女は高い所が苦手、怖い所が苦手だった。

怖い事があると私の体の中に飛び込む

だが尻部分だけは体の外に飛び出している

「これがまさしく頭隠して尻隠さずだな」私は心の中でそう思った


夕方頃彼女の姿が薄れてくる。疲れたらしい。

帰ろうという提案を彼女はすんなり受け入れた。



 帰りの車の中、彼女が私に尋ねてくる

雨がポチポチと降り出してきた。私はワイパーのスイッチを入れる。

 「あのね……私の正体判った?」彼女の姿はどんどん薄くなっていく

「判らない……もし良ければ教えてほしい」

と私「神社の神様とも思えないし…」


「そうね……」彼女は呟いた。しばらく黙ってから「私はあなたの妹になる筈の子だったの。この世に生を受けなかったけど」


「じゃ名前は無いのか?」と私は驚く

「そうだよお兄ちゃん」彼女はそう言った「欲しかったなぁ…名前」


私はしばらく黙った。到着地の神社に到着した。

雨は小降りとなっていく。私は傘を差した

車を降りて二人並びながら神社の境内を歩いていく

「なら名前を俺がつけてやろう」と私は言った「アカリ」


「アンチョコ過ぎるだろそれは…」と妹が言う「でも嬉しい…アカリ…ありがとう。貰うね」


「なぁまた会えるよな…」私は尋ねる「また会いたい」


アカリが寂しそうな顔をする「それじゃ私は成仏できなくなっちゃう」


私は素直に謝った


「さようならお兄ちゃん…そろそろ時間だよ」アカリが消えかけの体でそう言った「お兄ちゃんの妹で…よか…っ……」


私は消えゆく彼女を抱きしめようとしたが空から金色の光が降るばかりだった


私は思いっきり泣いた。泣き続けた。傘は地べたを転がっている

いつの間にか天気は大雨になっていた。


翌日私は両親にアカリの事を話した

母親も釣られて泣き出した。でも不思議そうな顔でこういう

「私は流産経験なんてないんだけど」


ハッとして父親の顔を見ると父親の顔は真っ青だった


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後、衝撃を受けました [一言] とても面白かったです 引っ張って、こう来るかーと思わせるのは とても素晴らしいセンスだと思います
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