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その51


「う……ん」


「柚! 」



「あ…… 啓ちゃん? あれ? 私啓ちゃんとキスして…… あれ?」


「柚! 目が覚めたんだな」


俺は柚の目が覚めた事に嬉しくて柚を強く抱きしめた。 神様! ありがとうと心の中でそう叫んだ。


「い、痛いよ、啓ちゃん。 私もうどこにも行ったりしないから」


「バカ! お前、どれだけ心配したか……」


「うん、全部聞こえてたよ。 みんなが来てくれたのも見えてた。 だけど体が動かさなくて言葉も話せなくて…… 寂しかったよぉ! うぅ、うあ、うわぁぁぁん、啓ちゃん!」


「泣きたいのはこっちだ、本当によかった、よかった……」


「もうダメかと思った、 諦めかけてた。 お父さんたちの所に行くんだなって、でもお父さんたちが啓ちゃんと一緒に生きてって……」



柚が何を言っているのかよくわからないけどなんとなく理解出来た気がした。

柚は生死を彷徨ってる間にそんな経験をしたんだろう。


「柚、俺お前に渡したいものがあるんだ。 まだクリスマスだろ? これ……」


俺は柚がクリスマス楽しみにしてると聞いて自分なりに何をプレゼントすれば良いのか考えてペアリングを買っていた。

安物のペアリングだけど喜んでくれるかな?


「啓ちゃん、これって……」


「ごめん、こんな安物で。 こんなのしか用意出来なかった」


「ううん、とっても嬉しい。啓ちゃんが選んでくれたんだもん。 私にとってそれが1番なの。 それと…… ごめんなさい、私何も用意出来なかった。 せっかく啓ちゃんはプレゼントくれたのに私……」


「いいんだよ、柚がちゃんと生きて戻ってきてくれた、それが何よりのプレゼントだ。サンタが叶えてくれたのかな?」


「啓ちゃん……」


「だからさ、柚最高のクリスマスプレゼントありがとう」


「うん…… うん、どういたしまして」



そして俺たちのクリスマスはこうして終わった。



次の日柚が目覚めたと聞いてみんながやってきた。


「柚! このバカ! あんたはいつも無茶ばっかりして。 私たちがどれだけ心配してたと思ってるのよ? 新村君だってずっと付いててくれたんだからね!」


「そうよ! 本当にバカなんだから!」


「ごめんなさい、もう本当に無理しないから」


「当たり前よバカ! アホ!」


坂木と平井はそう言って涙を流して柚が目覚めた事を喜んでいた。


2人が去ると鈴菜も柚に会いに来た。


「柚〜! よかった、本当によかった!」


「あはは、痛いよ、鈴菜。 心配させちゃったね、ごめん」


「もう! なんでいつもそうなのよ柚は! 私柚に助けてもらってばかりで何も柚に返せてないのにこのまま目が覚めなかったらどうしようかと…… 」


「ははーん、啓ちゃんの事横取りでもしようと思ってた?」


「え? え? なんでそれを? もしかして喋った? 啓!」


「いや、俺は何も…… なんで柚が?」


あれ? 全部聞いてたって本当に聞こえてたのか!?


「啓? 私が寝てたからって〜! 鈴菜!」


「ご、ごめん、柚! だけど啓は柚のだってちゃんとわかってるから!」


「あはは、冗談だよ。 私ね、鈴菜の事ずっと妹みたいで可愛いなって思ってたんだ。 だから鈴菜は特別! 」


「柚…… そんな風に私の事思っててくれたんだ」


「うん、なんせ鈴菜は私が見込んだ子だもん」


「よう、鈴菜も来てたのか。目覚めて良かったな」


「あ、後藤さん! 」


「柚、安心しろ。 今頃あいつは海の底だ。 まったく少しは俺たちを頼っても良かったんだぞ? 啓に感謝するんだな」


「後藤さん、ありがとう。やっぱり後藤さんも優しいね! 会長みたい」


「はっ、何言ってんだかな」


「退院したら会長のお墓にまた寄らせてもらいます。 お父さんたちのお墓にも行きたいし」


「ああ、行ってやってくれ。 会長も喜ぶ」


「はい! 会長には最後に本当にお世話になったから……」



そうして柚は年明けにめでたく退院する事が出来た。


「ああー、やっぱり傷は残っちゃうよねぇ、ごめんね啓ちゃん。 こんな傷だらけの体で……」


「いいんだ、柚が今まで歩んできた証みたいな傷だろ? それはそれで柚の一部だ。 俺はそれ含めて柚の事が好きだよ。っておい、何泣いてんだよ?」


「ううん、嬉しくて…… 私啓ちゃんを好きになって本当によかったなって。私の家族もきっと啓ちゃんとなら喜んでくれるなって思って」


「ああ、俺も後で柚の両親にしっかり挨拶に行かなきゃな」


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