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その47 殺意2


柚の様子がおかしい事に気付いた。

そう、俺も柚と一緒にいた時刺すような視線を感じた。


柚は誤魔化そうとしていたけどさすがに無理だろ。

怯えているのを必死に隠すような笑顔だ。


だけど一体何が起きているのかわからない。

何か嫌な予感がしてならなかった。


「啓ちゃん、どうしたの?」


柚が心配そうに俺の顔を覗き込むがそんな柚の顔も不安に満ちた表情だった。


「いや、なんでもないよ? 明後日はクリスマスだろ?」


「うん、楽しみ」


「じゃあまたね」


「ああ、また明日くるよ」


もう時刻は最終の電車の時間なので俺は帰る事に……








__________________________________________









私はマンションの外に出て啓ちゃんが帰る後ろ姿を見つめる。

私の大好きな人。


だからわかる。 啓ちゃんも狙われる。

そしてそいつはすぐ近くにいる。

なんとなくだけどそんな気がする。



「ねぇ、出てきたら? いるのはわかってるよ?」


確信はないが言ってみた。 いたら何かしら反応するかも。


すると少し離れた所から人影が現れた。


「なんだ? 気付いてたの? 凄いな」


「ううん、いるかなと思って言ってみただけ」


「なぁんだ」


男が近付いてくる。

私のすぐ近くまで来ると男は止まった。


「あんた誰?」


「忘れたのかい? 酷いなぁ。 君の記憶に残るような強烈なインパクトを残してあげたのに」


「はぁ? あんたなんか知らないわ」


「6年前君の家族を殺してあげたじゃないか?」


その瞬間私は戦慄した。うそ? 死んだはず…… あり得ない!


「嘘だ…… 死んだはず」


「ところが残念! この通りピンピンしてるよ」


「あり得ない! 調べたのよ!? もしかしてあいつの知り合いか何か?」


「あれ? 信じられない? そりゃあそうだよね! 便利屋まで使って調べたのに生きてるなんて信じられないよね」


どうしてその事も知ってるの?


「あり得ない……」


「でも僕は君の両親の死に様をしっかり覚えてるよ? 母親なんてぐちゃぐちゃにしたもんねぇ!」


こいつ…… 本物!? だとしたら今までの私の行動は筒抜けだった……?


「おや? ようやくわかってきた? なら僕について来てくれるかな? ここは目立つしね」


「断ったら?」


「あの彼氏さんの可愛い顔が今度はぐちゃぐちゃになるかなぁ」


やっぱりそうなるんだ…… でも啓ちゃんには絶対に手出しさせない。


「わかった…… で? どこ行くの?」


「いいねぇ。 ゾクゾクしてきた。 少し行ったところに解体予定のマンションあるだろう? あそこならゆっくりできるよ」


男が嫌らしい笑いを浮かべ私に提案してきた。 断る事はできないので行くしかない……


スタンガン、念の為に持ってきておいて良かった。 私を殺す気? 望むところよ、こっちだってあんたを殺したい。 もともとその為に今まで生きてきたんだ。


マンションに着いた。 解体される予定なので誰もいない……

男は中心まで行くと止まり私に振り向いた。


「さて、この辺でいいかな。 聞きたい事山ほどあるだろう?」


「じゃあ聞かせて。なんで私の家族を殺したの?」


「そうだろうね、その質問来ると思ってたよ」


「いいから答えろ!」


「怖いなぁ、理由はないよ? 殺しに入ったのがたまたま君の家だっただけだ」


「理由もなく私の家族を…… じゃあなんであんたは捕まらないの? なんで生きてるの?」


「バレない殺しなんて山ほどあるだろう? 僕はね、快楽殺人者なんだ。 君と同じでツテもあるし僕のショーを楽しんでくれる人たちもいる!」



その手の住人…… 私も調べた事はある。ダークウェブ上で公開してる狂った連中と同じ類なのかもしれない。


「君の家に侵入した時子供が居たはずだと思ったんだけど隠れてたんだよねぇ? 通報されちゃったから君を探す時間がなくてねぇ」


「そう。それで?」


「それでね、変装も完璧だったし証拠も隠滅も抜かりなかった。だから僕も安心してたんだ、だけどねぇ。 少し気になってあの後しばらくして情報屋から君の情報を調べたんだ」



「そしたら君はヤクザに入って便利屋に頼んで僕に復讐しようとしている情報が入ってね、僕は先手を打つ事にした。 なんせ君が便利屋を雇うまで時間は十分にあったからねぇ! そして僕も偽装工作をしてもらった」


「そう、だから死んでたって事になったわけね……」


「残念だったね、君のした事は全部無駄! それどころか僕をけしかける羽目になった、どうだい? 今どんな気持ちだ? 自分を売ってまで全部徒労になった気持ちは」


私はどこで間違ったんだろう…… 復讐しようとしたから?


だけどこの気持ちだけは消せない。 私の人生は間違いだらけだったのかもしれない。でもこいつを殺したら、殺せたら私と同じ目にあう人は減るはず。啓ちゃんだって。だったら……


「あんたなんか死ねばいい! 生かしておけない! 」


「あはは、さすが復讐しようとしてただけあって威勢はいいね」


男は大きめのサバイバルナイフを取り出した。

私もスタンガンを構えた。


「んー、それじゃあ僕に届く前に死んじゃうなぁ。君は可愛いから顔だけは無傷で残してあげるよ」



許せない! 刺し違えても殺してやりたい!男は私に向かってゆっくりと近付いてきた。

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