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その21


朝日奈が散歩してくると言ってからしばらく経った。

戻ってくる気配がない。



「てか朝日奈の奴どこまで行ったんだ?」


「この辺よくわからないから迷ってるとかないよね?」


「ありえるわ。 電話してみるか、でもこういう時って出ないんだよなぁ……」


「あるある、あはは」


電話を掛けてみたがやっぱり出ない。

まったくどこまで世話を焼かせるんだか。


「俺ちょっと外見てくるよ」


「私も行く」


「鮎川は出歩かない方がいいよ、 ストーカーに付きまとわれてんだろ? それに俺が一緒にいたって頼りになるかわかんないしここで待ってるのが1番安全だ」


「……うん、わかった」


「いくらストーカーに付きまとわれてても親とか居そうな家に乗り込んでくることもないから安心しろよ」




「……そうじゃない場合もあるんだよ?」


「え?」


「ううん、なんでもない。 私はここで待ってるから行ってきて! 柚ちゃんと見つけてね」


「ああ」


俺は外に出て朝日奈を探した。 あいつの行きそうな場所なんて検討がつかないので電話を掛けながら探した。



クソッ、少しは気付けよ! いつもいつも何か起こさないと気が済まないのかあいつは。


そしてしばらく探していると俺の電話が鳴った、朝日奈からだった。


「おい、朝日奈! 今どこだ?」


「わかんない、どこかの公園」


公園? 俺はすぐ場所がわかった。 幼稚園の頃よくそこで遊んでいたからな。 なんだそこにいたのか。ここから10分ちょいで着く距離だ。



「今から行くから待ってろ」


「ごめん、もしかして何回か電話掛けた?」


「そうだよ、お前が全然戻らないから」


「本当にごめんなさい。 すぐ戻るつもりだったの」


「まぁいいや、そこにいろよ」


そして電話を切った、 なんだあいつ? 全然元気ないじゃないか。 もうとっくにいつもの調子に戻ってるかと思ったんだが。


そしてしばらく歩くと公園が見えてきた、 朝日奈もいた。

でも誰かと一緒にいる?


小さい幼稚園児くらいの男の子と母親?

朝日奈が母親にお辞儀されている。

そして朝日奈はしゃがんで子供の頭を撫でていた。



「おい、朝日奈」


「新村君……」


「あ、このお嬢さんの知り合いですか? あら、失礼ですけど男性ですよね?」


「ああ、そうです。紛らわしくてすみません。 どうかしたんですか?」


「このお嬢さんが迷子になったうちの子を探して連れてきてくれたんですよ。私がほんの少し目を離した隙にこの子居なくなってしまって……」


「そうだったんですか……」


「本当にありがとうございます。ほら、お嬢さんにお礼言いなさい」


「お姉ちゃんありがとう」


「良かったね、お母さん見つかって。 もうはぐれちゃダメだよ? 凄く心配するんだから」


「うん!」



そして母親は何度もお辞儀をして俺たちの元から去っていった。


「だから戻ってこなかったのか…… だったら言えば良かったのに」


「そうだね、そうだった。 ごめんなさい」


相変わらず元気がない。


「お前あんな顔するんだな」


「え、どんな?」


「さっき子供に話しかけてた時の顔」


「おかしかった?」


「いや、いつもの不自然な感じより全然いい」


「何よそれ……」


「でもまぁ、あの子供母親見つかって良かったな」


「うん、本当によかった。ひとりぼっちは寂しいもんね」



「あのね新村君、私さっき新村君に言ったこと嘘じゃないよ? 何かしてあげたいって、喜んでもらいたいっていつも思ってるよ? でも私上手くできなくて……」


「ああ、そうなんだろうな」


「へ?」


「朝日奈そうやって無理して考えなくてもいいと思うぞ? 俺お前がそうやって喜んだ事あるか?」


「………」


「どうしてそんな自分を貶めるような事しかできないんだ? 普段は明るく振舞って愛嬌振りまいたりできるくせに」


「ごめん、私バカだから」


「バカだってわかってるくせにそのままなのか?なぁ、何があったんだよ?」




朝日奈は俺に昔の事は話さない。 何かあってこいつを歪めてしまったのは確実なのだが俺はこいつの信用たる人物ではないのではないのだろうか?


「朝日奈ってさ、俺の事信用してない?」


「そんな事あるはずないじゃん! 新村君の事は誰より信用してるよ」


「じゃあどうしてだ?お前何か隠してる?」


「だって……だって新村君だからこそ言えないの、言いたくないの!」




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