その1
「おはよー!」
「おはよう」
そんな声が聞こえてきた。 知り合い同士か。俺にはここらにそんな奴はあんまりいない。
「おいっす!」
ラリアット付きの挨拶をされた。
あんまりいない知り合いからどうやら俺も挨拶されたようだ。
「どうした?」
「いてぇんだよ! 朝からドツきやがって」
「そんな言葉遣い似合わないでちゅよ〜」
「ああ、うぜぇ……」
「お前そんな可愛く生まれただけでも贅沢なんだぜ?俺なんか見ろよ!不細工に生まれてこのかた彼女もできねぇ!」
「俺もいたことねぇよ……」
「ぶっちゃけお前が女装すれば俺の彼女にしてもいいくらいだ」
「お前にそっちの気があったなんてな、 今まで下心ありで俺を見てたのか。 キモいから近付かないでくれ」
「冗談冗談、何が悲しくて男同士でイチャコラせんといかんのだ」
俺は「新村 啓」
俺は生まれつき女のような顔をしているらしい。らしいって言うのは認めたくないだけ。
小中と俺は男子からイジメられていた。
理由はこの外見。精神年齢が低い奴らのせいで女顔と言うだけでイジメられていた。
男子トイレ行くだけでもからかわれ体育でも女子更衣室で着替えろとか以下略
高校に進学し、こいつ以外とは昔の奴らと縁を切る意味であまり知り合いのいない高校を選んだ。
心機一転!ただ通学するのに1時間近く掛かるのが欠点だ。
だが新しい学校生活だ、最初が肝心! 髪の毛も短くカット、これで一応顔が可愛いだけで済むな。
「でさぁ、なんでお前俺と同じ学校にしてんの?」
「いやいや、いつも俺イジメられてる啓を助けてやってただろ?だから自然と同じ高校になっちまったんだ」
「ふ〜ん」
「それだけかよ!」
俺の隣で喋ってるのが「佐原 徹」まぁ腐れ縁か……
「入学式とか緊張するなぁ」
「そうか?さっさと終わって欲しいだけだわ」
「啓は冷めてるからそう言うと思った。 可愛い子いるといいなぁ。 彼女ゲットしてやるぜ!」
そんなこんなで入学式も終わりそして桜が咲き始めた頃、俺は新しい学園生活を送る事になった。
「ヤバッ!!」
なんかマズイもんでも食べたかな?俺は朝、学校に着き激しい腹痛に襲われていた。便意込みで……
トイレへ急いで行く。そこを曲がればトイレだ!だが同じく向かいの曲がり角を曲がった女子とぶつかる。
「いてて……はうッ!」
ヤバい、今の衝撃で更にヤバい……
「いたた……気を付けてよぉ。て、あれ?新村君?」
このクソ忙しい時に誰だよクソだけにと思い見上げると「朝日奈 柚」だ。同じクラスの美少女だ、ていうか隣の席。
朝日奈は俺にグイッと近付き俺の顔を両手で掴み顔を近付ける。何?キスされんの?てか普段なら嬉しいのだろうけど今はそれどころじゃないんだけど俺は……
「ん〜、新村君間近で見るとやっぱ可愛い〜! 廊下は走っちゃダメよぉ〜?」
そう言ってスタスタと歩いていった。
びっくりしすぎて俺はさっきまであれほど腹が痛かったのに今はもう……
なんてことはあるはずもなくトイレに直行した。とりあえず間に合ってよかった。