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その17



見舞いに行ってこいと平井に言われたがまた朝日奈の家に行く羽目になるとは思わなかった。


それにちゃんと行ったか朝日奈に聞くからねと念を押されてしまったのだ。

はぁ、仕方ない。


朝日奈に一応連絡を入れる。何気に俺本人が朝日奈にLINEでメッセージを送るのはこれが初だ。


1分もしないうちに返信がきた。どんだけ打つの速いんだ……


『新村君が私にメッセージくれるなんて感激で風邪治っちゃいそう! 近くに来たら電話して』


はいはい。

ていうかもう近いんだけどな、どうせスマホ弄ってるんだから掛けてみるか。


「朝日奈、もうすぐ着くんだけど?」


「はやっ!じゃあ出てるから早くおいで〜」


俺が行くと朝日奈はマンションの前で待っていた。 顔色良くなったな、これならわざわざ見舞いに来なくても良かったような気もするけど。


「新村君! ついに自分から私の家に来てくれたんだね!やっと私を好きになったの?」


「そんだけ言えれば大分マシになったんだな。 もう大丈夫だな? じゃあ俺は帰るから」


そうして回れ右した瞬間後ろの襟をグイッと掴まれる。


「ぅう〜、嬉しかったのにぃ」


泣きそうな顔になってる。 少しいつものわざとくさい感じと違う。 あれ? こいつ本気で言ってんの?

なんか今日はやっぱおかしいな……


「はぁ、わかったわかった。 少しお邪魔するよ」


「なんか気にくわないけどまぁいいや、じゃあ入ってって!」


家に入ると朝日奈はソファにもたれ掛かる。


「さぁて新村君、こんな私に何してくれるのかなぁ?」


「別に何も。ただ見にきただけのつもりだったしな」


「お粥食べたい」


「え?」


「お粥食べたい!」


「それで? 俺はどうすればいいんだ?」


「作って! ほら、すぐ動く」


ふざけんなよと思ったが弁当も作ってきてくれたし渋々作ってやる事にした。


朝日奈のキッチンを拝借しお粥を作っていく。 まぁ俺だってそれくらいは出来るさ。


「ほら、出来たぞ?」


「じゃあ、あーん」


「何それ?」


「食べさせて! 私は食べさせて欲しいの! それまで食べない」


「お前今日は一段とワガママだな……」


「私風邪引いてるの。 風邪引いた人には優しくしなさいって教わらなかった?」


「まったくわかったよ、ほら」


パクっと朝日奈は口の中にお粥を入れる。熱かったのかビックリしてる。


「んぅッ! フーフーしなさいよ」


「なんでそこまでするんだよ、はぁ〜」


しょうがないからしてやると……


「ヤバい。 新村君超可愛い」


すげぇムカつくんですけど…… そうして口に入れてやる。


「おいひぃ〜、新村君の愛が伝わるよぉ」


「そんなの入れてないぞ?」


「ムードも何もないのね、新村君って」


「風邪引いてるくせに何言ってんだよ」


「でもいいんだぁ、なんだかこうしてると昔みたいで」


「え?」


「ううん、なんでもない。 早くもっとちょうだい」


そうして全部食べ終わると朝日奈は満足したようで眠くなったから寝ると言い出した。


「新村君、私が寝るまで居てね?」


「頼むからとっとと寝てくれ。俺まで風邪が移りそうだ」


「あ、それいいかも! 新村君が風邪引いたら看病してあげるね」


「いや、酷くなりそうだから結構」


「本当に新村君は手強いなぁ。なんで落ちないかなぁ?」


「世の中そんな上手くいかないんだよ」


「知ってる」


「は?」


「本当に上手くいかないよね……全部」


「お前……」


すると朝日奈はもう眠っていた。

結局何が言いたいんだ? こいつは俺にどうして欲しいんだ?


付き合って欲しいって? 本当にこいつは心からそう思ってるのか?


次の日朝日奈は元気になったみたいで普通に学校に来た。


「やっほー、新村君。 昨日はありがとね!」


「良かったじゃん、新村君がお見舞いしてくれて。昔からの友達の私らより新村君にお見舞いしてもらった方が嬉しそうなのはムカつくけど」


「昔からので思い出した。今日ね、電車の中で鈴菜に会ったよ」


え? と若干坂木と平井の表情が固まった。


「それでなんて言ってたの?」


「私と仲が良い新村君を見てみたいって」


俺は聞かない振りをして場をやり過ごした。








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