戦闘準備
食事を終えた後、街外れに散歩に来ていた。
どうやらこのあたりはだだっ広い丘と草原、小さな街とその近くに川が流れているだけの土地のようだ。
散策がてら現状の把握もしておきたい。
未だに何が起こっているのかもわからないが、多分"転生"と言うやつだろう。
よく聞く話だ。
『死にかけの肉体に"死んだ直後の人間の魂"が吹き込まれ蘇生する』
というアレ。
まさか自分の身に起こるとは...
確信はないがそれなら合点がいく。
「おっと...」
今踏み抜かんとした足元の土に、花が咲いているのを見て足を上げる。
「それにしても、予備知識とかチート能力とかくれてもいいだろうよ...」
昔見たアニメでは、転生者は何かしらの能力が与えられていた。
見たところ自分にはそれがない。
「なくて当たり前か。」
そもそも"転生"だなんてこと自体不可思議なことだ、
納得もできるはずがない。
ただ....
「今を生きるには順応するしかない。か。」
ガキンッッ
「!!!!?」
突如、自分の右をかすめたソレは、先の花を切り裂いて地面に突き刺さっていた。
「ナイフ.....?」
状況を理解する前に、ナイフの持ち主が現れたらしい。
「イレギュラーが...」
長い髪を後ろで縛った男は、もう3本ほどのナイフを両手に持ちながら呟いた。
「え.......」
声も出せずに固まる自分に、男はまたもつぶやく。
「危険分子は....消しておくべき。」
振り上げたナイフは首元を切り裂く。
第2の人生は、短く、あっけなく幕を閉じた。
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「おいアキサメ!!しっかりしろ!アキサメッッ!!」
........。
「や........ど.....?」
今朝まで居た宿に戻っていた。
喉元の傷も、痛みも、何も無い。
目の前には
『『continue?』』
の文字。
「理解が追いつかないのはもう慣れたと思ったけど、、これは流石に......」
心の中でそう呟いて、静かに目を閉じた。