Episode 033
放課後の屋上。
本来、立ち入り禁止の場所である。
だが知る人ぞ知る隠れ人気スポットでもある。
屋上の扉の鍵は壊れており、ドアノブをガチャガチャすると開くことを知っていれば、誰でも入れてしまうのだ。
そこで1人の男子生徒が寝そべりながら、うなだれていた。
「あー、まったく。文化祭実行委員になんかなるんじゃなかった」
「あら、久しく見ないと思ったら立ち入り禁止の屋上で何を愚痴っているのかしら」
「柏原先輩こそどうしてここに?」
「質問しているのは私よ」
未亜は立ち上がり、屋上のフェンスに背もたれをつく。
「いやー、今年は姫ヶ崎と合同でやるんですが、色々大変でして。今日の集まりもまぁ、カオスもいいとこです」
「姫ヶ崎の生徒会長があなたの元カノなのよね」
「なんで知ってるんですか」
「逆になんで知られていないと思っているのかしら?」
「ですよね・・・」
未亜は頭を抱える。
「まさか本当に彼女がいたなんて、しかもあんなに綺麗な女の子と。そっちの方が私は驚きよ」
「まあ、もう別れたんですけどね」
「その割には仲がまだよろしいようで」
「あいつは俺以外に知らないだけですよ」
「何をかしら?」
「言わずとも話の流れ的に分かりますよね?」
未亜はため息をつきながら、続ける。
「・・・男をです。まぁ、全寮制の女子校に行ったらそうなるのは当たり前ですけど」
「気色悪いわね」
「おい」
「ちなみに私は未だに交際の1つもしたことないわよ」
「試しに俺と付き合います?」
「冗談にしても笑えないわよ。あなただって知ってるでしょ?私は」
「分かってますよ。ちなみに自分今彼女いますし」
数秒の静寂が流れる。
「えーっと、それも冗談よね?」
夕美はかなり動揺していた。
「いや、残念ながらホントですよ」
ちなみに未亜は死んだような目をしている。
「ちなみに誰とお付き合いしているのかしら?」
「・・・そうですね。言って良いものか迷います」
「言いなさい。これは命令よ」
「いや、いくら先輩でも関係のない俺への命令権はないですからね?」
「・・・っ。あなたどうして知ってるのかしら?」
夕美は未亜を睨みつけるように問う。
「むしろなんで知られてないと思ってたんですか?あんな只者じゃありませんよオーラ出しているのに」
「そんなオーラ出してないわよ!」
「では漏れ出てるんですね」
「はぁ。まあはそれはいいとして、いい加減誰とお付き合いしているのか言いなさい」
「クソッ、話逸らせたと思ったのに」
「諦めていいなさい」
夕美の圧に負けたのか、勘弁して未亜は言った。
「高柳ですよ」
「・・・あなた私のことからかっているの?」
「信じるかどうかは任せますよ。ちなみにそのことでも今頭を悩ませ中です」
「あなた一度、男子生徒たちから制裁を受けるといいわ」
「これでも大変なんですよ。今のマイハニーも中々クセがありましてね」
「そのマイハニーとかいう呼び方をやめなさい。気色悪いわ」
「冗談で言ってるに決まってるじゃないですか」
「分かってるわよ!それにしても、仮に、本当に、高柳さんとお付き合いしてるとしたらだけど」
「まだ信じきれてないんですね」
「あまり大変というイメージが湧かないのだけれど」
「それがですよ、あの女・・・」
ガンッ
屋上の扉が勢いよく開く音がした。
「彼女に対して、『あの女』はないんじゃないかな?」
なんとも笑顔が可愛い、高柳美紅がそこにいた。
「・・・よう、マイハニー」
「久しぶりだね、マイダーリン。ここ最近学校に来ないし、会えないなぁと思ってたらこんなところで浮気かな?」
「見たら分かるだろ。経験豊富な先輩にマイハニーについて相談してたんだ。浮気なんてしてないよ」
「そんなこと分かってるよ。でも意外だったなぁ、まさか柏原先輩にうちとのこと話すなんて」
「あなたたち本当に付き合っているのね」
夕美は驚きを隠せない。
「別に隠してるわけじゃないだろ」
「それはそうだけど。文化祭の集まり終わったんだよね?一緒にかえろ」
「隠してるわけじゃないとは言ったけど、さすがに一緒に帰ってるところを見られるのはちょっと」
美紅はにこっと笑顔を浮かべた。
言葉の返答はなく、浮かべるだけだった。
「分かったよ。先輩、自分は帰ります」
「えぇ、お幸せに」
「心にもないこと言わなくていいですから・・・」
「早くいこっ。寄り道したいところあるんだー」
「え、すぐにでも家に帰りたいんだけど」
「いこっ」
「はい・・・」
未亜はうなだれながら美紅と屋上を出た。
「なんだか訳ありのようね。ご愁傷様、かしら」
夕美はフェンスにもたれかかる。
「まあ、聞いていたよりは元気そうで良かったわ」




