Episode 023
久しぶりの投稿ではありましたが意外と暖かいコメントが来てくれて嬉しかったです。
わたし、葛西由紀子は実はファミレスでアルバイトをしています。
わたしの家は自覚できるほどに他の家庭と比べて裕福だと思います。
それは両親ともに一生懸命に働いているからであることも分かっているつもりです。
お父さんとお母さんの2人はいつも仕事で忙しいようで、家政婦さんに家事をしてもらっています。
ですが、実はお小遣いの方は他の方とあまり変わりません。
もらい始めたのは小学生の頃からですが、周りのお友達と同じくらいだったと思います。
曲輪田高校の近くにある姫ヶ崎女学園のような所謂お嬢様学校のようなところにも通わせるということもありませんでした。
それでも今のお小遣いで困ることはなかったのですが、その、えぇ、なんといいますか。
少女漫画というものにハマってからというものの、それを買うためにお金を使ってしまい……
つまりは、はい、そういうことです。
なので両親にアルバイトのことを相談しました。
すると両親はアルバイトすることに反対はせず、むしろ社会勉強になると背中を押してくれました。
曲輪田高校もアルバイトは許可願を提出すれば良いとのことだったので、早速相談した翌日に提出しました。
家の近くで探したところ、有名なチェーン店のファミレスの求人があったのでスマホにて専用のページから応募しました。
その後、面接を経て採用されここのウェイトレスとして働いています。
今日はまさか神坂くんたちが来るとは思いませんでした。
ここは意外と曲輪田高校の方があまり来なかったので少し動揺してしまいました。
時刻は21時。
「葛西さん、もうあがっていいわよ」
今わたしに声をかけたのはバイトの先輩で、わたしに仕事を教えてくれた大学生の三葉さんです。
「分かりました。それではお先に失礼します」
「はい、お疲れ様」
笑顔が素敵な方です。
「お疲れ様です」
わたしは着替えてから従業員専用の出入り口から出ました。
そこでふと思い出します。
それは桑田くんに言われたことです。
「帰り道に気をつけて、ですか」
心配して言ってくれたのでしょうか?
少し意外だったので、言われたときは少し驚いてしまいました。
わたしの家はここまで歩きで10分かからないほどのところにあります。
帰り道の途中、人通りが少ないところがあり、等間隔にある街灯がより一層静けさを醸し出しています。
「ねぇ、君」
目の前に2人の男の人がまるで待ち構えていたかのように出てきました。
「はい、なんでしょうか……」
とても嫌な予感がします。
「オレたちと遊ぼうよ、なぁいいだろ?」
これはいわゆるナンパというものでしょうか。
男性から声をかけられたことは何回かありますが、この人たちからは、上手く言葉にできませんが黒い何かを感じます。
その恐怖から身がよだちます。
「おいおい、そんなに怯えることぁねえだろ」
1人の男に腕を掴まれます。
ここから逃げなきゃいけないのは分かっているですが、身体が上手く動きません。
「ホント、ラッキーだわ。こんな上ものをいただけるんだからよぉ」
「アニキ、ちゃっちゃと持ち帰りましょうよ」
「………っ」
助けを呼ぼうにも声も出ません。
必死にこの人から離れようとしますが、やはり男の人の力には敵いません。
「あんま動くんじゃねぇよ!」
(誰か、誰か……助けてくださいっ!)
「だから帰り道には気をつけろっていっただろ」
聞いたことのある声、先ほど聞いた声。
「く、桑田、くん……」
「んだテメェ?」
もう1人の男の人が桑田くんに迫ります。
ですが桑田くんはそれを無視して何もなかったように、そのままわたしの方に歩いて来ます。
「無視してんじゃねーぞ!」
(桑田くん、危ない!)
「グハッ!」
「え……」
桑田くんは後ろを見ずに手の甲で男の人の鼻にぶつけました。
男の人は鼻を押さえながら倒れ込んでいます。
見たところ鼻血も出しています。
「お前、なにもんだ!」
桑田くんは無言で近づいて来ます。
「クソがっ!」
わたしの腕を掴んでいた男の人は手を放し、桑田くんに殴りかかりました。
「グッ!」
しかし、いつのまにか男の人は桑田くんによって顔を掴まれていました。
そして桑田くんは男の人の耳元で言いました。
「お前、いい歳して恥ずかしくねぇのか?臭いセリフも含めてやってること全部がくだらないし恥ずい。共感性羞恥でこっちがむず痒いわ」
「チキショウがっ……」
「チキショウはどっちだよ。女子高生に手を出そうとした変態犯罪者が」
桑田くんは男の人の顔から手を放すと、
「くたばれ」
えっと、その、男の人が最も痛みを感じるとされる部分を蹴り上げました。
男の人はあまりの痛さにうずくまっているようです。
「ったく、次にあったら一生使えなくすんぞ。何がとはいわんが。何がとは」
桑田くんはため息をついて、わたしの方に向きます。
「警察呼ぶか?」
「いえ、その、この場合どうしたら良いのでしょうか?」
「呼んでもいいが、俺も人を殴っちゃったしな。手加減したつもりが、まさか鼻血出すとは思わなかった。とりあえずこいつらが起き上がると面倒だし、一旦ここから離れるぞ。走れるか?」
「は、はい。大丈夫です」
そして、わたしたちは少し先にある公園まで走ってきました。
「桑田くん、本当にありがとうございます」
「気にするな、ともいかないか。だが俺は散歩してたときに偶然にも知り合いがピンチだったから助けただけだ」
「こんなところにですが?」
「まぁ正直なことをいうと、何となく葛西がああなるんじゃないかって思ったんだよ」
「わざわざ戻ってきてくれたんですね」
「見ての通り、一旦家に帰って着替えたけどな」
本当にわたしは幸運です。
桑田くんがいなければ、わたしは今どうなっていたか……
想像もしたくありません。
「あのときの忠告もそうでしたが、どうしてその、分かったんですか?」
「葛西はあの2人に見覚えがないのか?」
「え?」
「あいつらも店にいたんだよ。自覚があるかどうかは知らないが、お前の容姿はただでさえ人の目を惹きつける。その中でもあいつらの視線と表情に悪意が混じってたよ。あれは下世話で人を貶めようとしてる目だった」
わたしは仕事に精一杯で全く気づきませんでした。
それと容姿のことを言われると少し照れ臭いです。
「だから、わざわざ、わたしのために……」
「気づいちまった以上はほっとけないだろ。仮に事件になってニュースで流れた日には罪悪感で死にたくなる」
わたしはまだ本当に何も知らなかったのです。
好きな人の親友で、会えば会話する程度の仲。
それでも、お話していく中で少しずつ理解していると思っていました。
「桑田くん、強いんですね……」
「まあな。噂は知ってるだろ?」
例の噂。
彼が校内の女子生徒に避けられている原因。
ほとんどの人に信じられていて、尚且つ否定する人もいません。
ですが、このときからわたしはもう彼の噂を少しでも信じることが出来ませんでした。
筧さんに話を聞こうとしたときもそうです。
噂を否定するようなことは言いませんでしたが、どこか悔しそうな表情をしていました。
真実を伝えることが出来ないことに、それ故にあの表情をしたのではないでしょうか。
きっと先ほどのわたしのように誰かを助けた故に起きてしまったのではないか、そんな気がしてならないのです。
「あれは、本当なのですか?」
そうでなければ、神坂くんを含めてあのような素敵な友人が側にいるはずがありません。
仮に本当であったとしても、きっと何か理由があるはずです。
「本当のことだから否定しないんだ」
「仮に本当だとしたら、どうして……」
「葛西」
その目からは絶対に語らないという確固たる意思を感じました。
「お前は高柳と一緒に筧に話を聞いたそうだな」
「……えぇ、何もおっしゃってはくれませんでしたが」
「そうか、ならいいんだ。これ以上詮索されると困るんだわ。俺も、そして怜も」
「っ」
「だが、そうだな。特別に許可してやろう」
「……えっと、何をでしょうか?」
「俺の噂について、怜に訊くことをだ。俺からは、それと噂を知ってるやつらは絶対にいうことはない。だが葛西、キミが怜の心を掴むことが出来たあかつきにはそれを知ることができるかもしれない。まぁ、そこまでして知る価値もないが」
つまるところ、わたしが真実を知るには神坂くんから聞くしかない。
そのためにも……
「わたし、頑張ってみます。噂のこともそうですけど、やはり好きな人の一番側にもいたいですから」
わたしは意を決して言いました。
「あぁ、応援してる。自宅の前まで送ろう。今日はゆっくりと休むといい。色々と疲れただろうし」
「はい、そうですね。ありがとうございます」
わたしは桑田くんに家の前まで送ってもらい、そのまま別れました。
今日という日を、わたしは様々な意味で忘れることはないでしょう。
…………
…………………
………………………
……………………………
………………先ほどの公園にて。
「やあ。葛西さんをちゃんと送ってきたかい?」
「あぁ。ったく盗み聞きとは趣味が悪いな」
「君ほどじゃないよ。あんなに彼女を焚きつけて」
「嬉しいだろ?」
「複雑だね。君だって僕が聞いていることを分かってた上でわざわざ彼女にあんなことを言ったんだろ?」
「今日改めて思ったよ。俺たち、考えることは似てるってな。お前も彼女が心配だったんだろ?俺が少し行くのが早かっただけで」
「君と同じ理由さ。葛西さんが何時までなのか分からなかったから、10時くらいだと予想して来てみたらもう解決してた」
「そうか。なら俺は行かなくて良かったんじゃねぇか。あぁ、時間無駄にした」
「それ本気で言ってるわけじゃないよね?」
「結果論だ」
「君は相変わらずだね。……それはそうと、いつまであんなことをする気だい?」
「あんなこととは?」
「今更シラを切る必要はないよ。僕は今のところ恋愛をする気はないって再三言ってるじゃないか」
「今のところは、だろ。しっかしモテるのに勿体ないよなお前。驕ってないところがまた余計に腹が立つ」
「モテて良いことはないよ」
「モテないよりは遥かにマシだ」
「僕ももう帰るよ。今日疲れたのは葛西さんだけじゃないしね」
「そうだな。内容が濃いなんてレベルじゃない1日だった。帰って亜衣と風呂に入って癒されよう」
「…………警察呼んだ方がいいかな?」
「なんでだよ」
「自覚がないって怖いね」
「うっせー、俺は先に帰るぞ」
「残念ながら帰り道は一緒だね」
「そういやそうだな!これだからご近所は」
「それが嫌なら家族を説得して引っ越さないとね」
「無理に決まってるだろ」
「なら一緒に帰ろうか」
「あぁ、仕方なくそうすることにするよ」
月明かりが照らす街の中、2人の青年がたわいもない会話をしながら帰路についた。
噂のことをまだ引っ張んのかこいつ、とか言われるかもしれませんがまだ引っ張ります。
というより引っ張らざるを得ません。
理由は簡単、まだ完全に練り切れてないからです。
大まかにはあるんですけど、後から修正するのが面倒なので明言されるのはもっと先です、はい。
そして恐らく当初の2倍は展開が早くなっています。
そして恐らく誤字もたくさんあります。
最初から読み直したらそれはもう結構ありました。
それはもうしょうがないと思ってください。
自分ド素人なので。




