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Episode 022

俺たちはなんやかんやあった姫ヶ崎女学園との顔合わせが終わり、ファミレスで夕飯を食べに来ていた。


面子は俺、怜、生徒会長の一也の3人である。

どうやらこの2人、俺が気絶して迷惑かけたんだから奢れというのだ。

意外にも恩着せがましい奴らである。

まぁたしかに特に一也には迷惑かけただろうから、ここは高校生的に出費が痛いが奢ってやることにしよう。


「奢ってやるとはいったが俺の財布の中身はそんなに重くないぞ」


「分かってるよ」


「善処する」


おい、一也。善処するってなんだ?

それ、しない奴がいうセリフだぞ。


「じゃあ僕はこのネギトロ丼で」


「自分はドリアかな。あとみんなドリンクバーつけるだろ?」


「そうだね。ドリンクバー代は僕たちが払うよ」


「出来ればドリンクバー代だけ奢りたいとこだ。よし、俺も決まった」


俺は注文ボタンを押す。


「ご注文お聞きいたします。……え」


注文を聞きに来たウェイトレスはどこかで聞いたことのある声と見たことある容姿をしていた。


「こいつは驚いた。まさか葛西がここでバイトしてるなんてな」


意外も意外である。

ちなみにここのファミレスは制服が可愛いことでも有名なチェーン店である。

そのウェイトレス服というのが、まぁぶっちゃけメイド喫茶のそれと変わらない。

流石にミニスカではないが。

葛西の清楚な感じとよく合っている。


「神坂くんに桑田くん、それと生徒会長さんまで……」


葛西は葛西で動揺している。


「葛西さん、注文いいかな?」


「は、はい!なんなりと!」


始めたてなのだろうか?

彼女がアルバイトしてるとなれば、うちの高校の男どもが聞きつけているはずだ。

それと毎日誰かはこのファミレスにいるだろう。


「このネギトロ丼と、ドリアと。未亜は何にしたの?」


「あぁ、ペペロンチーノだ。それとドリンクバーも3つ」


「かしこまりました」


最初こそ俺たちと遭遇したことで慌てたが、普通に出来ているようだ。


「それと大盛りポテト1つ。以上で」


「はい。ご注文確認いたします」


そして葛西は注文を確認したあと、お辞儀してから去っていった。


「近々ここは大人気店になりそうだな」


俺はストローでオレンジジュースを飲みながら、葛西が別の客の注文を聞いている姿を見ながら言った。

彼女の姿を視線で追う客も数人みられる。


「バイトしてるのは知ったけど、こことは知らなかった」


ドリンクバーからレモンスカッシュを持ってきた一也が戻ってきた。


「バイト許可願って生徒会預かりなのかい?」


「いや、普通に先生に出すよ。ただそれを含めて書類管理の一部は生徒会に任されてるから、偶々整理してたときに見つけたんだ」


「うちの生徒会って、そこまでやらされんの?」


俺はむしろそこに驚く。


「他の高校は分からないけど、普通なんじゃないか?たしかに中学の生徒会よりはるかに仕事量は多いし、結構な個人情報が書かれた書類は管理してるけど」


「まともじゃない奴がなったらストーカーし放題だな」


なんせ住所を簡単に調べられる。


「僕はその発想が出てくる未亜はかなり危ない人だと思うよ」


いつになく怜が辛辣である。

まぁ、今日は迷惑をかけた(?)ので仕方ない。


「そんなこともあるから生徒会室の戸締りもかなり気をつけなきゃいけないんだ。書類が盗まれたとかなったら発狂するね」


なるほど、生徒会が管理している書類は生徒会室に置いてあるのだから当然か。

万が一何かあれば責任を取るのは生徒会長。

俺には無理だな、こんな責任のある役職。


「改めて聞くと大変なんだな、生徒会って。しかもイベントのたびに駆り出されるわけだろ?そう考えるとブラックだな生徒会」


「まぁ内申は良くなるし、大学の推薦も取れたりもするからメリットもちゃんとあるよ」


「だけど、それ以上にやりがいを感じなければ出来ないことだよ」


たしかに、怜の言う通りである。

大学の推薦は魅力的だが、その仕事っぷりに相応する対価であるかとなると、なんとも言えない。

部活だって出来ないし、並行して勉強もしなければならない。

費やす時間は半端ないものだ。

高校生という青春ど真ん中の3年間の中で、その時間は決して小さくはない。


「どうも。高校でもやろうと思えたのは君たちのおかげだ」


「……そう言ってもらえると、中学の頃やってきた愚行がほんのすこしでも無駄じゃなかったと思える」


一也はやっちまったとばかりの顔をした。


「すまない……」


「謝るなよ。別に悪いことしたわけじゃないだろ」


「そうだね」


恐らく、あの頃の後悔は一生引きずることになるだろう。

いや、きっとこれは自分への戒めだ。


「お待たせしました。こちら大盛りポテトになります」


「ありがとうございます」


大学生と思われるウェイトレスよりポテトがテーブルに置かれた。


「暗い話はここまでにしようか」


「そうだな。なぁ、生徒会って……」


俺たちはポテトをつまみながらたわいもない雑談をしながら料理を待った。

そして料理は思ったよりも早くきた。


「お待たせいたしました。こちらペペロンチーノとドリアです」


料理を持ってきてくれたのは葛西だ。

慣れたようにテーブルに置いてくれた。


「葛西さん、ありがとう」


「ありがと」


俺と一也は葛西に礼を言う。


「ネギトロ丼もすぐにお出ししますね」


葛西はキッチンのある方へと去っていった。

ネギトロ丼は味噌汁とお新香もついてる定食のようなものだからいっぺんに運べないのだろう。


「2人とも先に食べてていいよ。すぐに来るっぽいしね」


「そうか。ならお先にいただきます」


「俺は一旦ドリンク取ってくるわ」


「なら自分のも頼む。烏龍茶で」


「了解」


俺はドリンクバーのコップ2つに氷を入れ、俺のコップには野菜ジュースを入れる。

別に健康に気を遣ってるわけではなく、単純に味が好きなのだ。

ちょうどネギトロ丼を運んでいる葛西が後ろを通った。

そして目が合う。


「桑田くん、野菜ジュース飲むんですね」


「意外か?」


「いえ、その、あまり男性でお飲みになるお客様はいないですから」


「そうかもな。味が好きなんだ」


ちなみにスムージーは苦手。


「そのネギトロ丼、早く怜に届けてやってくれ」


「そうですね」


葛西は俺たちの席へ歩き出す。


「あ、そうそう」


そんな葛西を俺は呼び止める。


「帰り道は気をつけろよ」


「え、あ、はい。分かりました。ありがとうございます」


俺は一也のコップに烏龍茶を入れた。


「……一応、忠告はしたからな」


そんなことを呟いて、席に戻った。








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― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃくちゃ面白い [気になる点] のに更新が不安定なところ [一言] 正直読まなければと思いました。 こんなに面白いのに更新頻度が半年に一回くらいになってそうですね。 面白すぎるので一気…
[良い点] 更新待ってました( =^ω^)次回も楽しみに待ってます( =^ω^)
[気になる点] 主人公の過去に、親しい女性が帰り道に襲われた事件有り??? [一言] 更新有難うございます。 お待ちしておりました。面白かったです。 続きを楽しみにしています。
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