Monologue 01
これ本当は昨日の夜投稿する予定だったんですよねぇ……
しんしんと降り注ぐ雪。
その日はクリスマスイブでした。
つまりはホワイトクリスマスです。
わたくしはイルミネーションを見ながら彼と2人で歩いています。
今もそうですが、この日一日は本当に楽しかったです。
ふふ、このとき会話の中で彼が言っていました。
クリスマスイブは本来『クリスマス前夜』ではなく『クリスマス当日の夜』という意味なのだそうです。
詳しくはあまり覚えていないのですが、教会暦では0時ではなく日没で日付が変わるそうで、その場合わたくしたちが使っている時間に照らし合わせると24日の夜は教会暦では25日になります。
ですから教会では24日の夜にはすでにクリスマス。
だからその日のeveningで、クリスマスイブというそうです。
わたくしが『何でそんなことを知ってるんですか?』と訊くと彼は『俺に知らないことはないからな』と答えました。
彼らしいと思いました。
それは賢ぶっているというよりは、強がっているのでしょう。
彼のことをふと見たときはいつも、どこか哀しそうな目をしていました。
まるで世界に絶望してしまったかのような。
…………これは言い過ぎでしたね。
仮にそうなら今の彼のような表情は出ないでしょう。
わたくしが肩を寄せただけで照れ臭そうにする彼のことをわたくしはいじらしく思います。
肩を寄せて思ったのですが、彼とわたくしの身長はあまり変わらないんですね。
高校生になったら彼も背が伸びるでしょう。
対等な今を楽しまなくては。
…………身長でも対等でなくなったら、わたくしは彼と一緒にいることが難しくなるでしょうし。
これを聞いたら彼はなんというのでしょう?
きっと彼は『そんなことない』というような答えは出しません。
むしろ、その逆『そうかもしれないな』と言う可能性すらあります。
いえ、絶対にそう言いますね。
彼は良くも悪くも正直な人ですから。
彼はふとこちらを見ると、人差し指を親指にかけました。
『いたっ』
わたくしはおでこに若干の痛みを感じました。
彼が急にデコピンしてきたのです。
優しくしてくれたのでしょうが、それでも少し痛いです。
彼はわたくしのおでこを押さえている様子を見て、少し満足げです。
一体なんなのでしょうか?
わたくしが頰を膨らませると彼は堪えながらも声に出して笑い始めたのです。
このときのわたくしは拗ねて、彼と距離を置いて背を向けました。
笑い終わった彼は言ったのです。
『悪かったって。だが、デート中にあんな不安そうな顔すんなよ。せっかくのイルミネーションなんだぞ?明るく楽しんでくれ』
わたくしは思わず、呆然としてしまいました。
彼の口からこんな言葉を聞けるだなんて思わなかったからです。
わたくしの心の内を読み取って、表情もよく見てくれて、きっとわたくしが考えてたことなんてお見通しなのでしょう。
彼はわたくしの不安を汲み取って、それを晴らそうと今を楽しもうと言ってくれました。
言い終わったあとに照れ臭くなって歩き出してしまうところはやはり彼らしく、愛しいとさえ思います。
わたくしは笑みを浮かべながら、先に歩き出してしまった彼を小走りで追いかけました。
あぁ、なんて幸せなクリスマスイブでしょう。
そしてわたくしは彼の右手を取り、
『これからもずっと一緒ですからね』
…………残念ながら叶うことはありませんでした。
はい、というわけでせっかくなのでクリスマスエピソードを書こうと思ったんですけど、この時点で特に思いつかなかった(本編の進度的にもかけない)のでMonologueというカタチで誰かのクリスマスイブでの回想を書きました。
誰かは後々分かります。
それでは遅めのメリークリスマス。




