Episode 019
俺は今、文化祭実行委員会会議に出ている。
第何回かは知らない(これが初めて)が、今回から本格的に動くから一緒に来いと怜に言われたので仕方なくいる。
放課後は早く帰りたいというのに。
何のために帰宅部なのか分かったもんじゃない。
「これよりミーティング始めます。自分は生徒会長の佐々木です。先ずは実行委員長から挨拶してもらおうと思います」
佐々木一也、うちの生徒会長をしている。
ちなみに2年4組。
中学が同じなのもあり、それなりに面識がある。
たしか中学のときも生徒会にいたはずだ。
しかも2年生で初の生徒会長らしい。立派なことだ。
「もう何回かしてるのでわかると思いますが、うちがこのたび文化祭実行委員長になりました!3年2組の梅ケ原京子です!よろしくおねがいします!」
おぉ、なんとまぁ明るいというかキャピキャピした先輩だろうか。
たしか『四大天使』に引けを取らない美少女と噂されてたな。
ちなみにあえて言及すると少し訛った話し方で茶髪ポニーテール、そして夏なのになぜかカーディガンを雑に羽織っている。
スタイルが抜群にいいのは認める。
それにしても今時JKっぽいのに名前がなんか古風。
え、てかこの人が実行委員長なの?
絶対顔とスタイルで決めたろ。
不安しかない。
「今年は姫ヶ咲女学園との合同文化祭なので、去年とかよりも忙しくなるけどガンバりましょー!」
周りの拍手にあわせて、俺も拍手する。
あくまで第一印象ではあるが実行委員長に対して不安があるものの、佐々木や怜がいればなんとかなるだろう。
例年と違うというのはやはりかなりネックではあるが。
…………それにしても、やはり、あの姫ヶ咲かぁ。ハァ。
「今更ため息ついても」
「どうにもならないのは分かっている。だから俺は昨日神社に一万円札入れておねがいしてきた」
これでダメだったら覚悟しろよ神主。
「そんなに彼女に会いたくないのかい?…………気持ちは分からなくもないけど」
「あっちは全寮制だから今まで邂逅せずに済んだが、合同文化祭となると勝手は変わってくるからな」
「なら今回の会議はちゃんと聞いてた方がいいかも。今日は役割班決めだからね。姫ヶ咲と接点を持たない班に回れば仮にいたとしても会わなくて済むかもしれない」
なるほど、たしかにそうだ。
「だがその点は心配ない。どうせ男連中なんか特に滅多にない女子校との接点に食らいつくだろうからな。むしろあちらさんと会う回数が多い班に希望者が殺到するはずだ」
よし、これで万が一の可能性も消える。
レディパーフェクトだ。
………………10分後。
「合同企画班の最後の1人は桑田と」
書記をしていた生徒会長がそう黒板に書くと、
「なぜだーーーーーーーーーッ!!!!」
俺は膝と両手を地面につけ、ブラジルの人に大声で問いかけていた。
「なぜだ!合同企画班とか男みんなやりたがると思ってたのに!」
1人の男子生徒が答えた。
「そりゃ……なんかめんどくさそうだったから」
「おいお前ら!そんなんでいいのか!あの男子禁制のお嬢様女子校の女子と接点を持てるんだぞ!男としてこのチャンスをものにしようとは思わないのか!?」
「部活の方もあるしなー」「そんなお嬢様となんか話せねーよ」「彼女いるし別に」「お前は○ね、リア充が」
「まあ、ジャンケンで負けた未亜が悪いよ」
怜、お前まで!
「はい、今年はこんな感じでやっていきまーす。あ、それぞれの役割の中でリーダー決めてね」
「合同企画のリーダーは桑田未亜でおねがいしまーす」
おい、今とんでもないこと言ったの誰だ!
「お前か!」
「はい。あたしですよ、セーンパイ」
そこには小生意気な後輩こと三方花実がいた。
たしかに合同企画のところに名前があったし、教室入ったときに怜と俺の方に手を振っていた。
「他の皆さんとそれでいいですよね?」
「「「異議なーし」」」
「ふざけんな!俺なんかにリーダーが務まるか!」
「僕は良いと思うけどね。あ、ステージ班のリーダーは神坂になりました」
おい怜、てめぇこの野郎最近俺に何かやらせようとするんじゃねーよ。
それ親切でもなんでもないからな。
「神坂センパイもこう言ってますし」
「嫌だね」
絶対的に拒否する。
おもちゃ屋の小さい子供みたいに地面を背に泣きじゃくっても構わない。
「悪いな桑田。この国は民主主義なんだ」
「生徒会長まで何いってやがんだ」
「はい、合同企画班のリーダーは桑田くんね」
「委員長、違いますから。勘弁してください」
どいつこいつも……
「センパイ、あたしたちは文化祭実行委員なんですから委員長が決めたことに逆らっちゃダメなんですよ?」
「は?俺にも人権はある」
「だが桑田以外賛成なんだから過半数以上の多数決による決定は覆せない」
こ、こいつ……
「いくら生徒会長だろうが俺を本気で怒らせたらどうなるか……」
「未亜、いい加減諦めなよ。それと未亜が懸念してることだけど、姫ヶ咲はたとえ合同企画に関する場合でも男子禁制なんだからそもそも行くことはないし、入れないはずだよ」
「まぁ、そうだけど。なら大丈夫か?いや、でもなぁ……」
怜以外は正直何がそこまで嫌なのか分からないでいたが、たしかにリーダーは責任を伴うわけだから自ら率先してやる人間の方が珍しい。
未亜が合同文化祭含め諸々嫌な顔をし、しばしば頭を悩ませていた訳を面々は後に知ることになる。
「もー、男なんだからウジウジしてないでバシッとしぃ!」
「そうですよセンパイ。あたしは向いてると思いますよ?」
「諦めが肝心だって未亜自身も言ってたじゃないか。今がそのときだよ」
はぁ、やるしかないのか?
あれ?なんかのせられてないか?
今日は後輩にしてやられたよクソッたれ。
「わかったよ。やればいいんだろ」
「おねがいね。他の班も決まったらうちのところに」
どうしてこんなことに……
「そんなこんなで班決めおわり!今日のところはこんなもんかなぁ?あ、そうそう!生徒会長さん、あれいつだっけかな?」
「これから言おうと思ってたところです。急で申し訳ないのですが、姫ヶ咲女学園の方々と初顔合わせを来週の月曜日の放課後にやることになりました。特に合同企画班はお互いの協力が必要になるのでよろしくお願いします。場所は同じくここ生徒会会議室です」
うちの方でやんのかよ。
まぁ、それもそうか。
あっちは伝統的にも男子禁制で女子しか入れないのに顔合わせなんて無理か。
「未亜、小銭貸そうか?」
どんな気遣いだよ。
「大丈夫。万札あるから」
そう答える俺も俺だわ。
「僕は人生で初めて2万円を賽銭箱に入れた人を見るかもしれない」
怜よ、実は俺すでに昨日一万円札を2枚賽銭箱に入れたんだわ。
1人最寄駅で電車から降り、帰り道を歩いている後輩女子がいた。
「あたしもジャンケンで勝てれば神坂センパイと一緒になれたのかなー。そういえば、あのときのセンパイ威圧感すごかったかも」
花実は思い返す。
『いくら生徒会長だろうが本気で俺を怒らせたらどうなるか……』
「生徒会長もよく見たらあの一瞬で冷や汗かいてたし。神坂センパイもセンパイを諌めてるような……あ、あたし諌めるなんて言葉使えたんだすごい」
彼女は独り言を口に出してしまうタイプである。
「それにしても、今日はカラスがうるさいなぁ」
ちなみに独り言を口に出しながら歩く彼女を通り過ぎたサラリーマンは不思議そうな顔をしつつも、美少女なことが幸いし『可愛い子だなぁ』で済んでいる。
「神坂センパイと一緒じゃないけど、それはそれで。まぁ、頑張りますか」
そんな彼女の後ろを可愛い黒猫が通り過ぎ、電線にはおびただしい数のカラスがとまっていた。
そしてこの日は13日の金曜日であった。
姫ヶ咲女学園にいる『彼女』の正体なんですが、読者の皆さんはもう薄々気づいてるかもしれませんね(笑)。




