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吹雪に紛れる白と黒

 本来、妖と人間が関わり合うことはごくまれだ。種族どころか、生きている世界すら違うこともあるのだから、それは当然だ。

 

 その数少ない機会で妖は人に交わり、害をなし、また恩返しをするようなこともあったらしい。

 人々を愛し、守ろうとしたという妖の話も、人間の間には伝わっていると聞く。

 

 それに対するリオの感想は、日本の妖はずいぶん人に近いものがいるんだな、といったものだった。

 西洋の妖魔は――リオの知るそう多くない限りのものではあるが――人を襲うような、物騒な性質を持っているからだ。

 

 とにかく、そういった諸々にさして詳しくないリオから見ても、御空はとても変わった行動をしている。

 何の感情も義理もない――それどころか、顔さえ知らない人間たちを、守ろうとするなんて。

 

 御空と雪女の姿は、吹雪のせいでリオには見えない。ただぼふん!と攻撃が外れたらしい音が、時折聞こえてくるばかりだ。

 

 不意に吹雪の中から、大蛇のような雪が飛び出す。それに弾かれた御空が、地面に叩きつけられた。

 ばふっと雪煙が起こる。

 

「御空っ!」

「……どうやら、力の加減ができておらぬようだ。しかも、話し合う気もないらしい」

「ふーん。てことは、力づくでも一回止めろってこと、でしょ!?」

 

 一人なのに、御空がここまで攻められる相手。そこそこの強さなら、この前とは違う。

 

 黒い風に包まれ、リオは変化へんげする。見た目に変わったところと言えば、元とは違うゴシックロリータになり、大きく開いたデザインの背中部分からコウモリの羽が現れたくらいだ。

 だが戦闘力は、先程までとは比べ物にならないほど強くなっている。

 

 翼を広げ、雪の中に飛び込む。

 

「あんたの攻撃、雪ばっかだね。なら、フトコロはがら空きかな!」

「その前に、ここまで来れる!?」

 

 雪女が繰り出す雪を、リオは器用に避ける。戦闘慣れしているという理由もあるが、翼に掠りもしないのは実力があるからだ。

 距離を詰め、回し蹴り。もちろん力はそれほど込めていない。一応の手加減をしたのだ。

 

「きゃっ! 何すんのよ!」

 

 ころんと転がった雪女が、涙目でリオを見上げる。

 

「御空ー、確保したよ。……あんた、まだ生まれたての妖かぁ」

 

 どうりで手加減すらできない上、リオのたった一撃で動きを抑えられたわけだ。

 

「なんで暴れてたわけ?」

「人間が、あたしに意地悪するからよ! どうしてあんなことされなきゃいけないの!?」

 

 一度ふもとの町に下りた時、雪女は人間に山へと追い返されたらしい。相手が妖だけに、その手段は少々手荒なものだった。

 

「あたしにそんなことするなら、あたしがやり返したって文句言えないでしょ!?」

「復讐のつもりだったのか?」

「そうよ! 人間なんか、困ればいいんだわ! あたしは、友達が欲しかっただけなのに……っ」

 

 雪の上にぱたぱたと雫がこぼれる。

 

「友人が欲しいのか? では、俺と……」

「嫌! 半端者のくせに、偉そうにしないで!」

 

 バシッと音をたてて、御空が差しのべた手は振り払われる。

 

「わかった。では往くとするか、リオ」

「……うん」

 

 半端者という雪女が投げつけた言葉が、最後までリオの中に引っかかっていた。

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