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緋い炎の揺らめきは

 ギラリと攻撃的な光を帯びて、大太刀がリオに向かって振り下ろされる。

 危ういところでリオが避けたあとの地面は、大きく抉れていた。

 

「……もしかして、あんたがボスだったりする?」

 

 わずかにかすったらしく、リオの左足から赤い血がぱたぱたとこぼれる。

 

 大きい動きの割に、鬼が大太刀を振り下ろすスピードは速かった。

 

「いかにも。この隊の大将、落陽らくよう 深緋こきひだ」

 

 リオも妖の中ではかなりの戦闘力を持つ吸血鬼ではあるが、相手も鬼の精鋭部隊のボスなのだ。

 

 日本の主だった怪談でも、鬼は数多く登場する。人々が知っているモノは、その分力がある。

 それだけ――人さえもその存在を知るだけ――の力があるために、人間が怖れ、語り継ぐ。そして人間に語られることで、さらなる力を得る。

 これは妖たちが種族としての力の根元とする一部だ。元からの素質はもちろんだが、こうしたことでも妖は力を増す。

 

「タイショー……ね。じゃああんたを倒せば、他の奴らも帰るってことで合ってる?」

「ああ。私が敵わない相手ならば、あいつらとてそう簡単には歯が立たんだろうからな」

 

 つまりこの落陽 深緋と名乗った鬼は、彼らの中でも別格の強さを持つらしい。

 

 しかしここまでの会話で、リオはそれより引っ掛かることがあった。深緋の口調に、どこか御空と同じものを感じるのだ。

 御空を攻撃するからには、何かしらの感情があるのだろう。頭脳戦は得意ではないが、相手が動揺すれば実力差の大きいリオにもチャンスができるはずだ。

 

「あんたの話し方……少し、御空と似てるんじゃない」

「何……っ!?」

 

 語尾に、隠しきれない動揺の色が浮かぶ。そして黒曜石のような真っ黒な瞳に、炎がちらつく。

 それはついこの前見たばかりの、リエのそれに近かった。突き刺す視線の元であった目が、そんな感情を宿していた。

 

 いくら揺らめいてもその色を変えることはせずに、そこにあり続けた。

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