あなたのためにできること
リオが走り出す。同時に相手側からも一人、こちらに向かってきた。
あのハンマーが武器の鬼だ。よく見れば、年格好はリオに近い。
「はあっ!」
「っ。威力があったって、大振りならスキができやすくなるよっ」
しかし、リオの回し蹴りも外れる。相手の武器が大きいため、確かに隙もできるのだが、リオのナイフは通用しない。
そのため、懐に潜り込んでからしか攻撃ができないのだった。
リオの蹴りを避けたときに引いた遠心力で、鬼の少年がぐるりとハンマーを振った。
ぶおんと空気がうなる。
「っと。……なかなかやるじゃん。でも……」
「な……っ!?」
「あんまりスカーレットを、甘く見ないで! ってね」
広げた翼から、闇でできたコウモリを作り出す。リエほどではないが、リオもこの技は使える。
教えてくれたのはリエで、その後も何度も一緒に練習をしたのだ。
このコウモリの群れを相手に、少年の武器は不利だ。ほとんど抵抗することもできず、彼は退いていった。
「御……」
御空がいるはずの方へ振り返ったリオの横を、強い風が吹き抜けた。
「ぐっ! ……う」
すぐ後ろの木に、御空が叩きつけられる。
先程の風は、鬼の攻撃に弾き飛ばされた御空の衝撃で起こったものだった。
「御空! 御空!」
「リ……オ。逃、げ……」
「そんなことしない!」
置いていかれることの痛みも、恐怖も、リオはよく知っている。同じことを、御空には味わわせたくなかった。
リオを御空が助けてくれたように、今度はそれをリオが返す番なのだ。
闇でできたコウモリを、地面に叩きつけ、土煙で目隠しする。鬼たちがリオと御空を見失った隙に、御空を背負う。
「一旦逃げるよ、御空」
「ああ……。っ、う」
翼をはためかせ、森の中へ紛れる。どの道リオでは、御空を長時間支えることはできない。だが。
できることをするのみだ。




