離れない距離踏み出す一歩
リオは、御空のことをよく知らない。
優しくて、色々な相手に手を差しのべる。あまり強くはないけれど、まっすぐな言葉は誰かを救っている。
和服で、話し方も古風。気配にはすぐ感づいて、『一応』種族は鬼。
いつもリオは、御空の隣かななめ後ろを歩いていた。おかげで、彼の背中を見ることが多い。
姉は、『家名』や『期待』を背負っていた。御空はその背に、何を背負っているのだろう。
そのとき初めて、御空のことを今まで知ろうとしてこなかったと後悔した。
「リオ? 歩くのが速すぎてしまったか?」
そういえば、前は置いていかれかけるなんてこともあった。
御空がペースを落としてくれたのか、リオが追いつけるようになったのか。
「大丈夫。遅れてても、置いてはいかれないから」
「そうだな……。リオは強いからな」
そんなことを言われたのは初めてかもしれない。御空に認めてもらえたようで、うれしかった。
リオはただ、誰かに認めてほしかったのだ。自分が大切に想った人の、力になりたかった。かつては姉の、今は御空のだ。
必要とされればきっと、もう置いていかれることはないだろうから。
「でしょ。それに御空には何度も助けられてるし、頼りにしてくれていいよ」
「あれは俺の問題だから、リオまで巻き込むつもりはなかったのだがな……。リオには敵わぬ」
御空は眩しそうにリオを見て、ふわりと笑みを浮かべた。盗み見ることはあったが、こうしてリオに向けられたのは見たことがなかった。
そこに、かつて姉も向けていてくれたものを見た。
昔は、姉が変わってしまった理由を聞けずにいた。だけど今は違う。
知りたいなら、踏み出せ。たった一歩で、景色は変わる。少しだけでも、確実に。たりないなら、さらにもう一歩進めばいい。
「御空のおひとよしがうつったのかもね~」
「……俺のは、そのような大したものではない」
固い声に、数歩先に行っていたリオは振り返る。御空はたまに見せる、あのどこか哀しげな表情をしていた。
「おそらくただの……自己満足でしかない」
「そんなことない! 絶対、そんなことないよ!」
リオは確かに、御空に救われた。他にも御空との旅で、彼に助けられた者たちを見てきた。
「だから……今度それ言ったら、ぶん殴るから!」
「承知した」
何だ、ショウチって。雰囲気でなんとなくわかったので、リオはとりあえず納得してやった。




