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相反する感情の行方

 ふるりとアスルの耳が、また何かの音に反応した。話の間中彼の感情に合わせ動いていたしっぽも、落ち着きなくはたはた揺れる。

 

「どうかした?」

「ええと、君たち……」

 

 ふと、ここでリオと御空は自分たちが名乗っていなかったことを思い出した。もっとも、最初にさえぎったのはアスルの方だったのだが。

 

「リオ・スカーレットだよ」

「花白緑 御空だ」

「リオ、御空。今から来るあの子をお願い! 夜の森、危ないから」

 

 それだけを言い残し、アスルはくるりときびすを返し森の奥へ逃げるようにして慌てて走っていった。

 

 とっさの行動ながら、リオと御空は目を見合わせてうなずいた。一時交わした視線だけで会話し、リオはアスルを追い、御空はその場に残った。

 

「アスル。ちょっと待ちなよ」

 

 翼をはためかせ、リオはアスルの前に回った。かなりの速さで走っていたアスルは驚いたらしく、しっぽがぶわわっと逆立った。

 

「なんで逃げるの?」

「だって……だってぼく、狼男だよ。人間から見たら、怖いに決まってる。だから満月の夜だけは、会わないようにしてたのに……」

 

 自信なさげにへたんと耳が力を失う。妖ながら人間といたいと考えた彼は、自分が狼男であることを隠してきた。

 

 もし、親しい相手に自分を知られて、突き放されたら。恐怖の色で見られたら。

 アスルはそれを恐れているのだ。

 

「そばにいたいけど、気づかれたらきっともう会えなくなる。そんなことになるのだけは、嫌なんだ」

「そばにいたいから、離れるの」

 

 こくん、とアスルは無言でただうなずいた。くったり寂しそうなのは、耳もしっぽも同様だった。

 

「何それ。そんなの、思い込みかもしれないじゃん!」

 

 リエはそうだった。リオのことなんてお構いなしに、突き放して背を背けた。

 

 だからリオは、アスルの言うことを否定できなければ、自分のことをないがしろにしてしまうような気になったのだった。

 

「怖いと思われなくても、ぼくは種族も違うんだよ。混血ではあるけど、同じじゃない。違うのは……怖いよ」

 

 違うから。わかり合えないから。その気持ちはリオにだって解る。リエに対して、御空が一緒に向き合ってくれたから。

 

 だけど、そうして理由もわからず突き放された方は、どう思うだろう?

 想いを一方通行にしてはいけないと、御空は教えてくれた。だったら次は、リオの番だ。

 

「種族とか、血のつながりなんか関係ない。誰といたいかだよ! そう思ってるのは、ほんとに片方だけ? ちゃんと聞きなよ! 向き合ってみてよ!」

 

 リオの言葉は、どこまで響いただろう。

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