朝陽に追うのはその姿
数だけの山犬を追い払い、リオは木の根元に座り込んだままの御空の元へ向かった。
お礼という名目ではあったが、御空を放っておけなかったこともまた、事実だった。
「御空、大丈夫?」
「ああ……。おかげで助かった」
傷だらけではあったが、御空は差しのべたリオの手を借りずに自力で立ち上がった。
回復力が高いタイプの妖なのかもしれないが、リオは日本の妖もろくに知らない。
「……っ」
「っと、大丈夫じゃないじゃん。肩くらい貸すから言ってよ」
ふらついた御空を支えると、弱々しい声ですまぬと言われた。古風な言葉遣いは彼の癖なのだろう。
女とはいえ、リオは吸血鬼だ。力は人間などよりよっぽど強く、戦闘力だってそこらの妖よりある。
「家はこの前のあそこでいいんだよね?」
「ああ。世話をかける……」
御空の家――少なくとも、寝泊まりをしている場所――には、前に行ったから場所を覚えている。
夜の森は暗いが、リオのガーネットの瞳ははっきりとあたりの景色を映す。吸血鬼なのだから、視界という意味でも行動という意味でも、当然夜の方が動けるのだ。
迷いなく歩くリオに対し、御空からは時折がくんと力が抜ける。山犬たちに、相当痛めつけられたらしく、どれだけ回復力が高くてもこれなら全快まで時間がかかりそうだ。
「ついたよ、御空」
「恩に着る」
何だろう、オンニキルって。もっとわかりやすく言ってくれればいいのに、御空の話す言葉はときどきリオにはさっぱり理解できない。
「ついでに泊めてくれない? あんな動いたの久し振り」
必要がない限り、妖たちが争い合うことはない。好戦的な種はいるが、日本ではあまり見られないのだ。
「もちろんだ。何のもてなしもできぬが……」
「いいって。お礼なんだから」
いつのまにか夜が更け、木々の隙間から差し込む朝日にリオは自分が眠っていたことに気づいた。
「ん……。日光うざ」
日光は吸血鬼の敵だ。灰になるだの、燃えるだのも今は昔。動きにくいだけのものだ。
しかし何らかの対策をしなければ、冗談抜きに消える。長時間浴びることと、力の弱っている時に日光に当たることは、未だ克服できていないのだ。
「あれ、御空?」
家を出て捜すこと約数分。さほど離れていなかったようだ。
「どこ行くの?」
「行くべき場所へ、だな」
「ふうん。じゃあ、わたしもついてく」
御空に興味を持ったし、何よりおもしろそうだ。
これが二人の旅の始まりだった。




