ふうわりぱたぱた揺れるもの
暗がりの中から、リオとそう変わらない――十五歳程度の――外見の少年が出てきた。
茶色がかってはいるが、限りなく黒に近い色をした狼の耳としっぽを持っている。彼が狼男で間違いないらしい。
「君たちは?」
彼がリオと御空を見て不思議そうに首をかしげれば、頭上の耳もくてんと傾いた。
狼姿の時の攻撃的な気配は失せ、まるで別人、ではなくて別妖のようだった。
「わた――」
「!」
リオが名乗るまもなく、狼男の彼の耳がぴるんと何かに反応した。かと思うと、慌ててその場から離れようとする。
「あ、ちょっと!」
事情がわからないなりに、リオと御空も後を追う。
結局彼が立ち止まったのは、そこからしばらく走った所だった。
「何故あの場から離れた? 理由あってのことだろう?」
「うん……。だって、あの子の声が聞こえたから」
まわりを気にしながら、彼はそう言った。耳は相変わらず周囲を探るため時折ぴる、と動く。
だがそれとは裏腹に、ふぁたんふぁたんと、ゆったりしたリズムながらも、彼のしっぽがどこかうれしそうに揺れ始める。
反対に、何も聞き取らなかったらしい耳が、今度はくたりと垂れる。
「やっぱ狼男、耳いいんだ」
リオが人の血に対する嗅覚が鋭いように、狼の耳と尾がある彼らは嗅覚と聴覚が優れている。
だからこそ、あの場で誰より先に彼の言う『あの子』の声を聞くことができたのだ。
「ぼく……あ、ぼくの名前はアスル。で、さっき言ったあの子っていうのは、その……ぼくの友達」
ぱたぱたとしっぽの揺れるスピードが上がった。アスルと名乗った彼の顔も赤く色づいている。
「ふ~ん?」
『友達』と口にする前にわずかなためらいがあったことから考えるに、アスルはその『あの子』が好きなのだろう。
間違っても、ただの友人に対する反応などではないのだ。
御空だけがわかっていない様子で、不思議そうにしていた。




