月満ちる時欠ける時
リオたちが町に着いた時はオレンジ色だった空は、陽が沈んで群青色になっていた。丸い満月を見上げて、リオは御空の目の色とは少し違うなぁ、なんて思ったりした。
「御空は何の月が好き?」
「ふむ、そうだな……。十六夜月だろうか。わずかに欠けた月に、趣がある」
イザヨイ。聞くと、満月の次の夜に現れる月らしい。日本は月にもそれぞれ名前がついていると御空が教えてくれた。西洋ではどうかなんて、リオは知らないのだが。
「わたしはやっぱり新月がいいなぁ。だって真っ暗になるもんね」
月明かりに照らされた二人の歩く道は、どこかぼんやりと光っているようにも見える。
それが田畑や木々の中にあるからか、幻想的な風景だった。
「ねー何の妖かわかった?」
今日の宿になりそうな場所を探しがてら、ついでに御空が感じた気配の妖を捜しているのだが、一向にみつからない。
御空の言う通り悪意がないなら、放っておいてもいいだろうが、それにしては危うさも感じると御空は食い下がる。
「獣……のようにも思えるのだが、人の気配も混じっておる。とすると、純粋な妖ではないやも知れぬ」
「例えばどんな?」
「狐などが取り憑いている、などだろうか」
「憑依ってこと? 確かにそれなら、気配は混じるだろうね」
夜の方が、リオの感覚は鋭くなる。相手が人の気配も持ち合わせているのなら、嗅覚でリオが捜すこともできそうだ。
「方向は?」
「あちらだ」
御空が示したのは、進行方向から少しななめに逸れた場所。道から外れた森の奥の方だ。
すん、と匂いを確かめてみる。これなら、たどっていけばその妖の居場所を見つけられそうだ。
「御空、こっち」
「あいわかった」
くるりと振り返って御空に言えば、あたりまえのことのように応えてくれる。
闇の中、前に向けたリオの瞳がガーネットのように輝いた。




