縁の糸を結ぶよう
リエから忠告を受け取り、頑固なリオに根負けしたらしい御空だったが、それはその時だけのものだった。
結局あの後にも、御空はリオにさんざん同じようなことを言ってくる。早くあきらめればいいのに。なんてリオは思った。
「リオ。俺は追われる身だが、何も他の者までも傷つけようとは、彼らも思っておらぬだろう。だから……」
「あーもう! しつこいなあ! 行くって言ったら行くの!」
つーんとそっぽを向いて、議論の余地がないことを示す。ついでにわざとらしく耳をふさぐ。大して効果はないが。
しかし、姿勢だけでも充分御空に伝わったらしい。色々なことを口ごもりつつ、今回も退くことにしたようだ。
歩くのは、森にかなり近い町だ。というよりむしろ、森と町の中間といったところだろうか。
町の中に森があるとも、森の中に町があるとも言える。
「何かおるな。害意はないようだが」
「ふうん?」
御空は、かなりの範囲内にいる妖の気配もわかる。そう広くないこの町なら、おそらく全体がその範囲だろう。
そう仮定すると、その妖はある程度人と馴染んでいると考えられる。と付け足したのは御空だ。
「この前の九十九神みたいに?」
「おそらくな」
リオも御空も、外見は人間とほぼ変わらない。雪女や九十九神もそうだった。
つまり、そういう種族の妖が人の中に交わること自体は簡単なのだ。だが、どこかに異質な部分は必ず残る。雰囲気や性質に、それがにじむのだ。
「往くか? リオ」
「ついてくって、何回も言ってんじゃん」
わからず屋め。だけどそれが自分のために言ってくれているのだとわかるから、リオは何も言わない。それに。
その黒髪がわずかに隠していても、控えめだが確かにうれしそうに微笑んだ表情が、御空より背の低いリオにはしっかり見えているのだ。
そんな顔をされて、何も思わないわけがない。




