たった一言がずっと欲しくて
リオの家系スカーレットは、吸血鬼の中でも特に力の強い一族だ。権力・能力共に強いが、直系であるほど力を多く受け継いでいるらしい。
もちろんそれは生まれ持ったものであって、その後いくらでも変わる。
だからリエは、必死に強くなろうとした。立ち居振舞い、戦闘力。どれを取っても、名前に恥じないよう努力を続けた。
そんな姉に対して、自分はどうだっただろう。名前のことなんて、意識したこともなかった。自由奔放に生きてきた。リエが怒るのも当然だ。
「リエ姉さま、ごめんなさい……」
「もういいのよ、リオ。どうしたって、血ばかりは変えられないもの」
氷のように冷たく鋭く、だがどこか作り物めいていたあの姉は、もういない。その困ったような笑い方は、リオもよく知っている表情なのに、まだ遠い。
「家族とは、血縁ばかりのものではないぞ」
静かにリエの話を聞いていただけだった御空が、そこで思わずといった様子で声を上げた。
自分の中から、言葉を探しているように語る。
「それだけではない家族も、存在するのだ。互いに、家族でいたいと望んでいるだけでも、それでも家族になれるのではと、俺は思う」
リオの聞いたことがないような声音で、だけど知っているような表情で、御空はそう言った。
「貴女の妹は、リオは貴女のことをどう思っているだろう」
「リオ……が?」
揺れる瞳が向けられる。そうだ、姉と一番長く一緒にいたのは、父でも母でもなく、他でもないリオなのだ。だから。
言いたいこと、伝えたいことはたった一つだ。
「わたし、リエ姉さまが好き! 血なんて関係ない。だってリエ姉さまは、リエ姉さまなんだもん……っ!」
子供みたいに、リオはリエに抱きつく。迷子が家族をみつけたように。もう離したくないというように。
「リオ……。ごめんね、今までごめんね」
違う、リオは謝ってほしいわけじゃない。欲しい言葉はそれじゃない。
「愛してる。あなたは私の、大切な妹よ」
「リエ姉さまっ!」
その言葉が、ずっと欲しかった。一方通行の感情は苦しくて、ただ何か返してもらいたいだけだった。自分を、見て欲しいだけだった。
家族でいたかった。愛が欲しかった。
それは今、確かにリオを包み込んでいた。




