金の陽と星の鎖の道しるべ
御空が繰り出した鎖によって、ようやくリオは動きを止めた。
「俺は、リオが理由なく暴れるとは思えんのだ」
言いつつ、御空が一歩リオへと近づく。
ギリギリと鎖が音をたてる。リオが鎖から逃れようとしているのだ。御空が近づくごとに、野良猫のように威嚇する。
「理由を教えてくれ、リオ」
「うるさい……わたしは、あんたの血が欲しいだけなの!」
会話が成り立たない。御空の言葉は、リオに届いていないのだ。
リオの目はうつろで、向けられてはいるはずなのに御空を見ていなかった。
その様子と言動から、吸血鬼としての本能を強く喚び起こされたとだけわかる。
「何があったのかはわからぬが……。リオ、俺を見ろ。血などではなく、共に時を過ごしてきた『俺』を見ろ!」
牙をむくリオに構わず、御空はさらに近づいていく。きらりと、その金の瞳が輝きを増した。まるで陽の光だ。そんな目で、まっすぐにリオを見つめる。
「金色の……光? 御……空、呼んでるの?」
吸血鬼が弱点とするはずの陽の光。とてもよく似ているのに、それがリオを消し去ることはない。ただ暖かく、包み込むだけだ。
「ああ。聞こえるか?」
「……うん。道しるべみたいに、明るい」
銀の鎖が解けた。ふっとリオの身体から力が抜け、地面にしゃがみこむ。そのまま、うつむいて顔を上げない。
雨のしずくに紛れて、別のしずくがこぼれ落ちる。肩が小さく震えていた。顔を上げたリオはいつもより赤くなった目で、困ったように笑っていた。
「わたしのことなんか、放っておけばよかったのに。御空なら簡単に、わたしのことだって殺せたでしょ……っ」
不器用な笑顔。強がった時に表に出るのはいつだって、裏返された本心だ。
「俺がそんなことはせぬと、リオもわかっていただろう」
しゃがんだままのリオに目線を合わせ、ぽんとその頭に手を置く。
「これだけ長く共にいるのだ。それもまた、繋がりだ」
「……おひとよし」
「知っておっただろう?」
珍しく、少しいたずらっぽく笑う御空と顔を見合わせリオも笑ってみせる。
今度こそ雨が止み、森にも陽が差した。
そこに割り込んできたのは、リオに少し似たところのある少女。見た目の年はリオより二つ三つ上。吸血鬼の気配を漂わせている。
「やっぱりあなたのこと、嫌いだわ」
そうリオに吐き捨てた。




