闇の中輝く赤はガーネット
気がつけば、リオは山小屋に戻ってきていた。見下ろすベッドで、御空はまだ眠っている。
常に感じていた、どこか不思議で甘い、いい香りがすぐそこにある。
にやり、と三日月の笑みを浮かべる。朝のまだ暗い時間の闇に、ガーネットが妖しく煌めく。
その白い首筋にリオが咬みつこうとした瞬間、御空が金の瞳を開いた。雨雲のせいで朝陽は隠れているのに、部屋の明るさが増したかのようだった。
「……っ!」
「俺が気配に聡いことは知っておろう。気づかぬとでも思ったか?」
一目見て、リオがいつもと違う様子なことに気づいたのだろう。突き飛ばして距離をとり、御空は体勢を整える。
すぐに応戦せず様子をうかがっているのは、彼の性格からだけではない。
「それでも……あんたの血が欲しい!」
素早く御空が避けた床に、穴が開いた。変化時のリオの蹴りは強力だ。それは近くにいたのだからよくわかっている。
しかし、このままではさして頑丈ではなさそうなこの山小屋は崩れ、御空は追いつめられる。持ち主の人間とて、知らずのうちにここを壊されたら困るだろう。
そこまで考え、御空は扉を開け雨の中を走る。当然リオも追ってきた。目の赤色がまるで炎だ。
ぶわっという風と共に、リオが翼を使って御空の前に降り立った。
「ね、最後まで味わい尽くしてあげる。欠片も残さず、わたしが独占したいの」
うつろな瞳で、リオは武器であるナイフを構えていた。
事情を尋ねるにしても何にしても、今戦わなければならないことに変わりはないらしい。
だが、できるだけ傷つけたくはない。
「刃桜」
言葉と同時に、御空の手に現れたのは日本刀。
斬りかかってきたリオのナイフを受け止める。ギィンと高い金属音が、辺りに何度も響いた。
御空が反撃に出ようとすると、リオが怯んだ。自分の武器との尺の違いを警戒したのだろう。
しかし、それこそが御空の狙いだった。
「銀鎖結星!」
四方八方からの銀の鎖が、リオの動きを封じた。




