雨音と夜の闇とが隠すこと
木々に隠された山の中には、人に見捨てられた小屋がぽつんと建っていた。その気になれば住むこともできそうなほど、そこには物がそろっていた。
休んで、ついでに一晩泊めさせてもらおう。今のリオたちに、ちょうどいい場所だった。
力の使い過ぎなんてバカなことをした御空を、リオ一人で長距離を連れ歩くのは無理だ。
「すまぬな、リオ。面倒をかけた」
しっかり話せるくらいには回復したらしい。けっこう頑丈で助かった。だが、まだ自力で動き回れるほどではないのだろう。リオが座らせた二人掛けのソファに座ったままだ。
「今さらあれだよ、ほら……ミズクサイってやつ?もうそこまで他人じゃないんだから、さ」
では、何という関係でどのくらいの近さなのか。
「ちょっと外見てくる。人いたら困るし」
御空の返事は聞かず開けたドアの外、空はオレンジ色に染まっていた。
いつだったか御空は、その色をタソガレ色と言っていた。
夕陽にしてはまだ高い。しかし見ているうちに、オレンジに灰色が侵食し始めた。
すん、と匂いを嗅げば水の気配。あれは雨雲で、あと十分もしないうちに雨が降りだすだろう。リオは山小屋に引っ込んだ。
「雨が来る。明日の昼までは、止むと思うけど」
「そうか。では今日は、ここに世話になるとしよう」
その後、いらない遠慮をする御空をベッドに放り込んだ後、陽が沈むと同じ頃に雨が降った。
夜から月と星が消え、さらに闇が濃くなる。
夜は妖の時間だ。昔から人間はそれを知ってか知らずか、極力外に出なくなる。
深い闇の色と、叩きつける水の音。混ざり合って、空は藍色になっている。
脳裏に浮かぶのは、あの人の姿。
「……今度は誰が、わたしを置いていくのかな……」
「リオ?」
「……っ。なんでもない! おやすみ!」
闇と雨が、何もかもを隠してしまえばいいのに。




