流れる水が分かつ場所
御空の感覚に従い二人が着いたのは、どこにでもあるような広場――というより、ただの空き地に近い場所だった。
もし遊具でもあれば、公園とでも呼べたかもしれないが、せいぜいいくつかのベンチしかないここは、単なる空き地だ。少なくとも、リオから見ればそうだった。
そんな場所は奇妙なことに、浮世でありながらもどこか常世の空気が漂っていた。
前にリオと御空が行ったあの雪山の雰囲気にも似ていた。
「……妖同士がぶつかったようだな」
「その妖たちの力でも残ったのかな」
近くならば、リオでもそのくらいのことはわかる。
雪女が吹雪を起こした時に常世の空気が高まったように、人ならざるモノである妖が力を使えば、他の妖にもその痕跡をみつけることができるのだ。
「誤って人が迷い込むやも知れぬな」
こうした常世の気配がある場所に、不思議と惹きつけられる変わった人間や、偶然にも通りがかったことで迷う人がいる。
御空はそんな人間を心配しているのだ。妖なのに人間に対しそんな感情を抱くなんて、本当に御空は変わっている。
つと、御空が地面に片手をついた。ちょうど空き地の入り口――つまり、境界だ。
「水離流別」
リオたちの通ってきた向こう側の風景が、ぐにゃりと一瞬歪んだ。御空の今の一言で、何かが起こったのだ。
疑問を込めてリオが視線を送ると、気づいた御空は説明してくれた。
「結界でこの辺りを囲った。これで人も妖も、そう簡単に出入りできまい。今回の原因も、ここに閉じ込められたはずだ」
「そういうこと」
前回の雪山は、人が来るような場所ではなかった。しかしこの空き地は多少人の出入りがあるようだ。その対策なのだろう。
それにしても、御空が結界を張れるような力を持つ妖だったなんて、初めて知った。本来そういうことが得意なのは、むしろ人間の方だ。
「天狗と九十九神のようだな」
「人も一人いるみたいだよ」
人間に対しての嗅覚なら、リオの方が鋭い。
慎重に進んだ先、開けたところで人と九十九神に天狗が向かい合っていた。九十九神は、ちょうど人間を護るようにして立っている。
空気が動く。九十九神の短い剣と、天狗の槍が交差した。
「このままでは、外にも被害が及ぶ」
「わかった。でもあの二人相手はヤッカイそうだな~。何とかするけど、引き付け役は御空がやってくれる? あと、血」
「……あいわかった。頼むぞ、リオ」
くっと御空の白い手首を咬む。二度目だけど、やっぱり不思議な味がした。最後まで味わい尽くし独り占めしたくなるような魅力。誰も知らない秘められた宝石をみつけたような感覚。
「って、それどころじゃないけど」
互いしか目に入っていない妖たちの間に割り込む。天狗に回し蹴り、九十九神にはローキックを食らわせる直前、思わぬ止めが入った。
「おれの友達に、何すんだっ!」
人が、九十九神をかばったのだった。




