転移とお別れ
「…一週間に一度、いえ、一ヶ月に一度でいいです!神界に来てください!!」
「…………はい?」
アイリスは何を言っているのだろうか。…え、本当に?
「えっと…条件はそれだけ…?」
「それだけ…って、普通は私達がどんなに位の高い神でも神王様には条件を出すなんて事出来ないんですよ?」
「そ、そうなのか…神王って凄いんだな。」
「そうですよ!これからは神王としての自覚をもってください。」
わかったと一言いったあと、そう言えばというように手をポンと叩いた神莉
「あぁ、そう言えばさ、神王になったからといってやらなきゃいけない仕事とかあるの?」
「基本的にはありませんが…判断を神莉様に煽ることはあると思います。ですが、量もそんなに多くはないので、気になさらないで結構ですよ。」
「そっか、わかったよ。えっと…そういえば今から行く異世界の名前はなんて言うの?」
「呼び名は種族によって違いますが…人族に呼ばれている名は、《メサイヤ》ですかね。」
「わかった、ありがとう。…それじゃあ、そろそろ行こうかな?」
「はい…わかりました。」
何だか不満気な表情を浮かべながら渋々承知するアイリス。
(アイリスはなんでこんなに不満そうなのだろうか…)
本当にわからないと言った様子で心の中でそう言うシンリ。
(はぁ…マスターは鈍感さんなんですか?)
呆れたように返してくるナヴィに、どう言うことかと聞き返そうとするシンリ…
「では、転移を開始します……」
「え?あ、うん、じゃあ行ってくるよ。」
少し気になったが、気にすることでもないかと思考を放棄するシンリ。
「行ってらっしゃいませ。シンリ様………あ、やばい」
しくじった、と口元をヒクつかせながらそう告げるアイリス。
「…嫌な予感がする。」
「し、神莉様申し訳ございませ…」
慌てふためいたアイリスの顔とともに、シンリの視界は暗い闇に落ちて行くのだった…
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鬱蒼と生い茂る木々達の群れ、上を見上げてもそこに太陽はなく、薄暗い。
木々が光を遮っているのだろうか。なんとか視界を保てるほどの明るさ。
ここは「死の森」。迷い込んだものは2度と外の景色を拝むことはできない。
中に入ると凶暴な魔物達の餌食、逃げようと思っても逃げ道はない…待つのは「死」のみ。
そんな場所に、見蕩れるような優しい光を纏いながら現れた人物。
「どこだよ…ここっ!」
その人物は、この世界に一体どんな影響を及ぼすのか…
それはまだ……
誰も知らない。
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