3話赤い紙
「 始めっ! 」
大男が合図をかけると同時に少年はその化け物に突っ込む
「 おりゃあああ! 」
化け物が動こうとしたその時、眼鏡の男は使い魔に命じる。
「 ジーマ動くな…… 」
少年も止まる、意味がわからなかった。
「 どういうつもりだ! 」
眼鏡の男はニヤリと笑う。
「 こちらがいきなり本気を出すのは可哀想かとおもってね? 」
少年は笑う。
「 まじかよぉ 」
「 後悔すんなよ眼鏡のおっさん 」
少年は全力で右の拳を握りしめた。そして化け物の顔を凄まじい勢いで殴る。
化け物の顔に拳がめり込む、化け物の体は浮き上がりそして凄い速度で飛んでいき壁が凹む。
眼鏡の男は言葉をなくす。
「 なっ……なんだと。 」
瞬殺だった。もう化け物がいたはずの壁にはその姿はない。眼鏡の男は膝を落とし、大男は言葉を失い口が開きっぱなしになっていた。
それを見ていた少年が口を開く
「 おい、でかいおっさん。これで俺もギルドに入れんだよな? 」
大男はあっけにとられながらも言葉を返す
「 あっあぁお前の勝ちだ…… 」
眼鏡の男はよほどショックだったのか未だに放心状態である。
大男が眼鏡の男に近寄り声をかける。
「 なあ、ケイジン仕方ねぇよ。これは完全にお前の負けだ。」
ケイジンこれが眼鏡の男の名前であろう。
ケイジンはゆっくりと立ち上がる。自分の使い魔がこうもあっさり負けるとは思わなかったのだろう。
目にはうっすら涙がにじんでいる。少し唇を震わせながら疑問を問いかける。
「 お前何者なんだ……だだのガキじゃねーだろ? 」
にっこり笑って少年が答える。
「 ただのガキだよ!ただ生まれつき力は強いんだ! 」
ケイジンがニヤリと笑って頷きながら笑う
「 そうか……そうかぁ……ふっふははははははは……! 」
なんで笑っているのかもわからないので思ったことを少年はそのまま大男に問う
「 なんだよ! このギルドは変なにやけ方するやつしかいねえのかよ! 」
ケイジンは急に顔を歪め腹を抱えながら爆笑する。
「 すまねぇすまねぇ!ただ負けたのは久々でよ! 」
そこに大男が口を挟む
「 よぉし!じゃあ登録するぞ付いて来い! 」
大男の後についていく、そういえばとケイジンはと思い後ろを振り返ると笑顔で手を振っていた。
そう考えていることを察したのか大男はケイジンについて話す。
「 あいつは一応このギルドのナンバー3なんだぜ 」
確かにあの化け物は普通なら勝てない。
自分の力に一瞬酔いしれる。
「 そうなのか…なんか悪いことしちまったな。」
大男はにやけないよう我慢しながら答える。
「 いやいやあそこまで瞬殺されると逆に気持ちがいいってもんよぉ! 」
「 まあいいか。」 とすこしケイジンに罪悪感を覚えながらも黙ってついていく。そしてロビーについた。
「 ここで登録すんのか? 」
「 いいや、こっちだ 」
少年は、他にも部屋があるのかと思ったが、そういえばあんな地下があるのだからおかしくはないかと納得した。
大男はロビーの右端のドアを開ける。続いて中に入ると、そこは明るい部屋だった。たかそうな机に椅子。ソファーもあるがかなりたかそうだ。
壁にはなんだかたかそうな絵もある。
「 なんだこの部屋!もんのすごくたかそうな部屋だな!! 」
感心していると大男は自慢げにそして嬉しそうに笑う。
「 これは俺の部屋だ!お前も仕事こなせばこのぐらいすぐなれるさ! 」
「 俺はこのギルド『ギャンブラー』のマスターのフウだ。皆んなはフウさんって呼んでる、これからよろしく頼むぜ新人! 」
大男は自己紹介をしてギルドへの入団を認めた。少年は胸が高まる。このマスターの部屋を見る限り。この仕事はかなり儲かるらしい。
フウが少年に問いかける。
「 そういや、お前名はなんだ 」
少年一瞬詰まりながらもは答える
「 ア……トゥーファン・レイドキーだ!トゥーファンとでも呼んでくれ 」
フウは初めのつまりに疑問を覚えながらもそれを受け入れた。
「 おう!よろしくな!トゥーファン! 」
トゥーファンにはまだ聞きたいことがあった。使い魔のことである。
「 なぁ、フウさん 」
「 どうした? 」
「 使い魔ってのはどうやって呼ぶん
だ? 」
あぁとフウはケイジンの召喚のことかと納得し、トゥーファンの誤解を解く。
「 ほれっ 」
ボンっと音を立てて小さいドラゴンが現れた。トゥーファンは思わず声を漏らす。
「 ……えっ? 」
「 1回召喚しちまえば簡単に念じれば出てくるのさ。」
「 え?じゃああの長い詠唱は? 」
「 いらねぇ 」
その空間にすこし沈黙が流れる。
「 …… 」
トゥーファンが問いかける
「 じゃあ1回目の召喚はどうやってすんだ? 」
その言葉にあぁ!とフウは納得し説明を始める。
「 まずこの紙を置く、それから白い紙だとさっき見た詠唱でいい。 」
トゥーファンは割り込んで話す。
「 白以外の紙もあんのか? 」
フウは答える
「 あるぜ、白の他にも青、緑、茶そして赤だ。」
赤というときだけフウの顔色が変わった。それをトゥーファンは黙って聞く
「 白は何もいらないんだが、その他の色はそれを魔法陣の上に置いてやる。青は水。緑は草。茶は土。そして赤は…。 」
そう言ってフウは詰まる。トゥーファンがその後を聞く
「 あ、赤は何がいるんだ? 」
フウは嫌そうに眉をよせ答える
「 術者の『血』だよ 」
トゥーファンは寒気がした。なんでそんなものを婆ちゃんがもっていたのか。意味がわからなかった。フウさんは補足を続ける。
「 白よりは色付きの方が断然強い奴が呼べる。その色付きの中でも赤は桁違いに強い 」
フウはうつむきながら。自分の過去を喋り始めた……。