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眠る姫君と古城の主  作者: 雷炎
MAD GATHER TO NATURE AND CASTLES
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八話:トランプ

「ええー!!嘘!!また私の負け!?」


「ハハハ、姫ちゃんババ抜き弱いね~」


「おばさんったら、またビリ?」

私はムッと二人を睨む。

「姫ちゃんじゃないって言ってるでしょ!!アノールも!!またグーで殴るよ!」


「…何やってんだお前ら…」

俺は久々の大仕事で朝から出かけていたのだが、帰ってきてみるといつぞやに見たヘタレ王子とアホ魔法使いが己の城で遊んでいるではないか。

何故か初対面なはずの2人とも波長が合ってる


…あ、馬鹿だからか…

「あ、ディーお帰り~。一緒にババ抜きしようよ!!」


「いや、いい。」

ディーはそれだけ言うと、腕を組んで壁にもたれかかり、3人の様子を見ている。


マリィが嫌がっていなければ何も問題ないか…。

ディーは無言で自室に戻っていった。

それから、ディーが仕事の日に限らず、2人は何度も古城に遊びに来た。

「…お前ら、どんだけ暇なんだ?」


「暇なわけないだろ?僕は王子だぞ?」


「俺は暇だよー。だって魔法使いだもん。」

各々の理由を告げる2人に少々呆れるマリィ。

「アノール暇じゃないんじゃん…ブラッドも、魔法使いだから暇って何よ…」

器用にトランプマジックをしながら会話するアノール。

「いや、魔法使いって暇なんだよ?」

ブラッドはアノールからトランプを奪い3人分のトランプを配りながら続ける。


「雇い主が居なければ魔法使いへの仕事なんて無いに等しいよ。魔法使いって評判悪いから、何らかの称号がないと信用してもらえないんだ。」


「どうして称号がないと信用されないの?」


「自分の身に何があったか思い出してみろよマリィ。それだ。」

私は納得して何回も頷く。

「城にいる魔法使いは日々忙しそうだぞ?ブラッド君もディーさんも僕の伝手で城で働くかい?」


「嫌だね。まず俺は働きたくないもん。」

トランプを器用に配りながら、あかんべーをするブラッド。

ディーは何故か顔が一瞬暗くなったが、直ぐにいつもの顔に戻り、話し始める。

「俺も遠慮しておこう。俺は顧客を持っているし、忙しいのは好かない。」


「そう?ああ、ブラッド君。配ってくれてありがとう。」


「別に楽勝だよ。さあ、次は何のゲームをする?姫ちゃんが弱いからババ抜き禁止ね。不貞腐れるし。」


「不貞腐れてないもん!!次こそ勝つから次もババ抜き!!」

マリィはキーッと言いながら机を叩いている。

「よし、じゃあ次も…」


「次はダウトだな。」

ブラッドに被せるよう話してきたのはディー。

ディーの手にはいつの間にかトランプがあり、ブラッドの手からは逆にトランプが消えていた。

茫然とするブラッドを横目にディーは平然とマリィの隣に座って言う。

「えっ?俺のトランプ…」


「おお!!ディーが参加するんだね!これは負けられないよ!それで?ダウトってどうやるの?」


「ダウト…?僕も分からないので教えてもらえますか?」


「ああ。」

ディーはニヤッと笑いながら2人にダウトのやり方を教える。

ディーが参加してから余計に賑やかになり、4人は飽きもせず永遠とトランプ遊びをつづけ、気が付けば夜になっていた。

「ヤバい、王子の立ち位置的にこんな夜遅く帰るのはヤバい…」

空の暗さを見て顔を青くするアノール

「ありゃー。次からは時間確認をしながら遊ばなきゃねー。」

と、呑気なマリィ。


「じゃあ、俺が送っていくよ。」

そう名乗りを上げたのは意外にもブラッドだった。

「俺どうせ独り身だし、時間の都合とかもないし、いいぜ?」


「本当かいブラッド君!!助かるよ!!」


「じゃあ行くぜ?」状況がつかめないマリィとアノール。困惑しているアノールにブラッドがよくわからない呪文を唱えると、アノールは空高く舞い上がり、悲鳴とともに消えていった。

「よし、あと3秒後には城についてるはずだ。じゃあねマリィ、ディー。またね。」

それだけ言うとブラッドは闇の黒に紛れて消えてしまった。


残されたのはディーとマリィの二人だけ、先ほどまでわいわいとしていただけあって、何だか寂しさを感じた。

「楽しかったね、今日。」


「…ああ。」


…考えてみれば、私が起きてから2か月程たった。この2か月間は目を見張ることばかりだった。

私が眠る前よりも技術は進歩しているし、服の趣向も違う。

料理も増えていれば、家の形も違う。

けれど、私はその変化が嬉しかった。

そりゃ、悲しいこともあるけど、眠る前は城の中しか知らなかった私が、習った程度でしか民衆を知らなかった私が、今はこうして町で、しかも友達もできて楽しく暮らしている。

それもこれも起こしてくれたディーのおかげ…

「ディー。」


「どうした?」


「起こしてくれてありがとう。ディー、大好きだよ。」

満面の笑みを浮かべながら「大好き」というと、ディーは顔を真っ赤にして外を向いてしまった。


そんな反応はズルいよ…。

私はディーの反応を見て照れてしまい、頬を赤く染めた。暖かくなった頬に冷たい風が差す。


もうすぐ冬が来る。

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