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眠る姫君と古城の主  作者: 雷炎
MAD GATHER TO NATURE AND CASTLES
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三話:町へ

あれから私はこの古城の部屋の配置、それからこれからのことを話された。

これからと言っても私は居候で、地位もお金も無い元お姫様。

身元がバレてはいけないので行動も家周辺に限られている。

それでも城から出たことのなかった私にとっては新鮮で嬉しかった。

この古城で暮らして3週間ほど経ったが、私は毎日周りの森を散策して知識を得ているだけだった。

ディーは気が向いたときについてきてくれて、森の説明や世界の話をしてくれるが基本古城から出ずに本を読んでいる。


今でこそ何も驚きはしないが、起きた当初は驚きの連続であった。

私はまず彼の食事に驚いてしまった。美味しい夕食だと思ったら彼の手作りだということに驚き、彼がワインを飲んでいたので、ワインなら貰おうかと「ちょうだい」と聞くと「これは血だ。」と答えてきたことにも驚いた。

その時に彼は吸血人だということを述べ、とても驚いた。

本当は血以外は栄養にならないのだが、料理の味はわかるので作るのも食べるのも好きなディーは日常的に料理を作って食べているらしい。


知識として吸血人はどういうものか知っていたが、私は初めて生きている吸血人を見た。

城には人と魔法使いしかいなかったからだ。ということをディーに話すとディーはなんだか少し怖い顔をしていた。


ディーはいろいろと不思議だ。


そんなディーは魔法使いなので働きたいときだけ働いてお金を稼いでいる。

魔法使いの仕事一件につき、相当な高給なのか3週間のうち彼が森から出て仕事をしに行ったのはたった1日だけ。

他にもディーには不思議なところがある。

それは髪型と髭だ。ディーは見た目30代後半くらいのオジさんだが、大人の色気や風格、優雅さや品性をもったカッコいいオジさんだった。

絶対におひげがなければその辺の若者よりカッコいいと思うのにおひげは絶対に剃らせてくれない。

ディーがオジさんに見えるもう一つの要因が髪型である。

センター分けの緩いパーマがかった少し長い髪、これがディーを更にオジさんに見せている。

ディー曰くこれが自分自身のお洒落らしい。

自らオジさんに見せてるくせに「オジさん」って呼ぶと怒るし訳が分からないが弄るのは面白い。

私は古城で暮らすようになってから毎日ディーに料理を習ったり、森で遊んだりして楽しく暮らしている。

もしかしたら、城で暮らしていたころよりも断然楽しいかもしれない。

しかし、この生活である大きな問題があった。


「ディー、服がない。」

ディーは読んでいた本から目を離してこちらを向く。


「ディー、一日だけ町に行きたいです。色々買いたいです。」

ディーは少し考えてから「わかった」という。

どうやらディーの血のストックもなくなっていたらしく、好都合だという。

私は初めての町にワクワクしていたが、私が「着ろ」と指定された服を見てゲンナリした。


「なにこれ…」


「町へ行くための変装だ。攫われたはずの姫が若いまま下町居るとばれたら危ないからな。」

返す言葉もない。実は私が眠っている間、60年という時が流れていることが分かった。60年という時は、どんなに美しい人も皺だらけの老人に変え、赤子を老い始めの大人に変える。

そんな中攫われたとされる私を知っている老人が騒いだら大事だ。

私たちは最善の注意を払いながら町への道を進み始めた。

ディーと私は無言で歩き続けた。

別に気まずいわけではないが、質問があったため、私はディーに問う。


「ねぇディー?」


「なんだマリィ?」


「ディーっていくつなの?」


「それはこっちも聞きたかったんだ。お前は眠る前はいくつだったんだ?」


「私は21歳。丁度誕生日の日に連れ去られたの。それで?ディーは吸血人になる前はいくつだったの?」


「…そろそろ着くぞ、フードを深く被れ。」


「あ、うん。」

サラッと流されてしまった。ディーは尋ねたら返事をしてくれるが、ある種の問いかけは受け流す。

基本的に『ディー自身のこと』や『世界旅行前の話』はしてくれない。


…もっと仲良くなったら、話してくれる日が来るのかな?


「着いたぞ。」

顔を上げるとそこには婦人服屋。

ボーッとしていたのであっという間についてしまった

「お金はこれだけ使えるぞ。好きなモノかって来い。」そう言って向かいのカフェに入っていこうとするディーに、

「私、お金の使い方わからない。」という事実を告げると、ディーは片手で自分の髪をワシワシと掻き毟り、迷っている。

ダメ元でフードの下から「お願い。一緒に買い物しよう?」と可愛らしく言ってみる。

するとディーは少し頬を赤らめて「しょうがねぇ。」と婦人服屋に入ってきてくれた。

やってみるものである。

入ってきてくれれば簡単で、私は機能性に長けている可愛らしい服を必要な分だけ買ってもらった。

二人は婦人服屋を出て、ディーは血が売っている店で必要量の血を買っていた。その時のディーの顔はとても暗く、血が好きではないことが見て取れた。

全ての用事が済み、古城に戻ると


一人の男がリビングで待ち構えていた。

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