三十話:愛してる
ブラッドがディーを運ぶと言って暫くたったので、マリィは初めてディーの自室を訪れた。
まずはノックをするが勿論返事はない。
マリィはそっと中に入り、ベッドに仰向けで寝ているディーに近づく。
安らかな寝息を立てているディーを見てマリィはフフフと笑う。
今日からディーは私の彼氏…私はディーの彼女…「…フフフ…」そう言えばディーの本当の名前って何だろう?…起きたら聞いてみよう。
マリィはディーの頬をツンツンしたり髪を梳いたりと好きなことをしていた。
もっと触れたいとマリィはベッドに上り、ディーを押し倒した形で乗った。
「好き…大好き…」
マリィはディーの鎖骨、頬、唇とキスを落とした。
いけないことをしているような背徳感から少し自分の頬を赤らめながらも抑えきれない思いがマリィを突き動かし、耳を触ったり、腕を触ったりと好きなようにディーを動かした。
「…ぬるいな。」
「えっ?」
急にしゃべりだしたディーは突然私をベッドに寝かせ、先ほどとは逆転したような形になった。
「ぬるい。寝ているんだからもっとやってよかったのにな。」
「ディ、ディー!!いつから起きてたの!?」
マリィは顔を真っ赤にしながら口をパクパクとさせている。
「ん?お前がドアをノックした時から…俺の口や頬に可愛らしいキスをしたのも覚えているぞ?」
マリィは開いた口はふさがらないまま恥ずかしさで唇がわなわなと震えていた。
「夜這いのようなことをしてくれるってことは、期待してもいいんだよな?そういう気持ちってことでいいんだよな?」
もう夜ということもあって、部屋は甘くかったるいような空気になり始めている。
そして、マリィの匂いを嗅ぐように、耳元で限界だと唸るようにそう告げるディーに「そんな聞き方卑怯だよ…」と呟くマリィ。
「それは、肯定と取らせてもらうぞ?いいな?」
「勝手にしたら?」と真っ赤な顔をディーからそらす様に横を向く。
これが私のせめてもの抵抗だ。
「じゃ、狡賢い魔法使いは絶世のお姫様を頂くとしましょうかね…」ディーは片手で私の顎を掴み、無理やり正面を向かせて乱暴にキスをする。
奪うような熱すぎるキス。
ずっと舌と舌を合わせていればいいものの、たまに私を赤面させるためか舌を引いてリップ音を立てながら唇を離す。
そして私の涙ぐんだ情けない顔を確認すると、優越に浸った笑みを浮かべてからまた唇を近づけてくる。
「これが本当のキスだよ、お姫様…次夜這いするときはこのくらいはしてくれよ?」
恥ずかしいことを耳元でささやかれ、顔が熱くなる。
更に何度も何度もキスをされていたら身体がもどかしさを感じ、自然と太ももと太ももを擦り付けてしまう。
「…マリィもその気になったみたいだな?」
口に出されると途端恥ずかしくて「違う。」と言ってしまう。
「強気もいいけどな…なるべく優しくするが…俺も限界だからな…」
そういうディーの顔には苦痛の表情が浮かんでいて、心身的に本当につらいのが見て取れる。
「いいよ…勿論…でも、なるべく優しくして…」
「ああ…」
私とディーはどちらともなくキスを交わした。
そして、私はディーと一つになった。
私とディーはこの日を忘れることは無いだろう。
ディーが過去を明かした日で、私とディーが結ばれた日であるこの日のことを…二人が目を覚ましたのは昼過ぎだった。
二人とも互いの顔を見るなりキスを交わした。
「おはようマリィ。」
「おはようディー。」
マリィは気になっていたことをディーに聞いてみた。
「ねぇディー?ディーの本当の名前って何?」
「ん?ああ、俺の名前か…ローレンス・デゥループだ。」
「ローレンス!!カッコいい名前ね。でも、ディーはどっちで呼ばれたい?」
「俺か?長いことディーで通って来たし、デゥループってところからディーって呼ばれることもあったし、ディーでいい。あ、でも…」
ディーは突然言葉を切り、マリィの目元にキスを落とす。
「二人きりの時とかは…ローレンスって呼んでほしい。」
不敵な笑みを浮かべるディーにマリィはまた顔を赤くしている。
「マリィはまた赤くなって…可愛いな…」
二人はそれからしばらく余韻に浸ってからシャワーをそれぞれ浴びて着替えた。
その日の夜、すべてを見越していたかのようにブラッドたちが酒やご馳走をもって現れた。
ディーは何故か最初にアノールとナタリアに謝っていた。
アノールとナタリアも「こちらこそごめんなさい」と謝っていた。
けれどまあ、そのあとはいつも通りに戻っていて安心した。
途中に掻い摘んだディーと付き合うまでの経緯やディーの過去を交えながら朝までどんちゃん騒ぎで盛り上がった。
もう朝日が見えているとき、3人は帰っていった。
「さよならー!!…さっきまで騒がしかったのが嘘みたいに静かだね。」
「そうだな。」
「でも、3人は騒がしすぎるからたまにでいいかも。」
マリィは悪戯っぽく笑う。
「そうだな…なあ、マリィ?」
「ん?なに?ローレンス。」
「お前がもう少し大人になって、それでもまだ吸血人になってもいいという時が来たら、お前を吸血人に変えるよ。」
「それまで我慢できるの?」
マリィはローレンスの顔を覗きにやにやと笑う。
「私は別にいつ噛まれてもいいけどね。だって、歳を取ったってずっとずっと二人で一緒に居たいって気持ちは変わらないから。」
にっこりとほほ笑むとディーは一瞬ビックリした顔をしてから頬を赤らめた。
「まったくお前は…」
風が強く吹き、マリィの髪とスカートがひらひらと揺れる。
「風が強くなってきたな。入ろう。」
「うん…」
二人はなかよく古城へ戻った。




