二十七話:説得
ブラッドはそれを聞いて高らかに笑った。
その笑いが癇に障ったのかディーはブラッドを魔法で吹っ飛ばした。
「何が可笑しい!?彼女は穢れなき姫で俺は薄汚れた魔法使い。おまけに吸血人で人殺しだ!!受け入れてくれるわけがない!もし、アレを人殺しじゃないと言ってくれても!!俺の身体は…彼女の血を求めてしまう…今でさえ血の誘惑に抗うのに精一杯なのに、彼女が死ぬまでの数十年…ぞんな短い時間すら抗える自信がない。こんな悍ましい話しをする俺を化け物以外なんと形容すればいい?」
ディーは自身の顔を片手で覆い、嘲笑する。
「アンタは馬鹿だね。だって、その話を姫ちゃんに言ったわけじゃないんでしょ?姫ちゃんなら話せばわかってくれる。それに、姫ちゃんはフラれたと思って出て行った。というか、アンタがフッたから飛び出した。もう何を失うものがあるの?」
ディーは虚無を映した瞳でカーペットを見つめる。
「全部ぶちまけて、砕け散っちゃえよ。」
それだけ言うとブラッドは古城から消えた。
しばらく茫然と立ち尽くしたディーは拳を強く握り、勢いよく古城を飛び出した。
「そうそう、それでいいんだよ。俺の代わりに姫ちゃんを幸せにしてあげてね…」
ブラッドは満足そうに古城の屋根からディーを見下ろしていた。
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どのくらい歩いたかな?ここはどこかな?辺りは暗くて…何も見えないや…
足を止め、へたり込むとまた涙があふれてくる。
口はカラカラで水分なんて無いはずなのに止めどなく涙は溢れる。
お酒臭い恰幅の良い男が私の手をつかむ。
下卑た笑みを浮かべながら立ち上がらせてくれる。
目的はなんとなくわかるが、抵抗する力も精神力も残っていない。
もう、好きにしてくれ。
目をつむり、また涙を流すが、何時まで待っても何もしてこない。
ゆっくりと目を開けるとそこにはいるはずのないディーの姿があった。
口がカラカラで声が出ない。
「目を閉じてろ!!」言われるまま目を閉じる。
数十秒ほど経ち、「目を開けて。」というディーの優しい声がしたので開けるとそこは古城のリビングだった。
目の前には水を持ったディー。
「飲んで。まずは泥を落とすために風呂へ…沸かしてあるから。」
私はコクリと頷くだけ、それだけが今できるささやかな反抗。
ササッとお風呂へ入り、腫らした瞳を隠すことなくリビングへ行く。
「座ってくれ。」指示されるがままソファーに腰を下ろす。
「マリィ、これから長い長い昔話をしよう。今から400年前の話しだ。」




