二十六話:葛藤
side【D】「ただいまー」
「おかえりなさい!!さあさ!!ソファーに座りなさい!!!」
「えっ?お、おお。」
一週間、目もろくに合わせていなかったマリィだが、どういう風の吹き回しか今は俺の背中をぐいぐい手で押しながらソファーまで案内しようとしている。
宣言通りソファーに座らされ、対角にマリィが座る。
「…どうしたんだマリィ。」
マリィは少しうつむきながら押し黙っている。
うつむいているマリィの頬はほんのり赤く抱きしめたくなるほど可愛かった。
「あのね…」それだけ言うとまた押し黙る。
焦れったいがこんな時間も愛おしく、自分の中の心情が凄まじく変わったことに苦笑いしそうになる。
「今笑ったな…今私は心の準備をしてるんだよ!!笑うとは無礼千万!!」
「笑ってないぞ?で?心の準備は出来たか?」
「あっ…あのね!!」
side【M】
キスをされたあの日から私は毎日考えた。
あのキスの意味を…しかし、どう考えようと、何度考えようと、そうとしか考えられない。
あれは私を親愛ではなく恋愛として愛してくれているキスだろう。
少し前までディーが全てを話してくれたらと思っていたが、ディーにだって言いたくないことの一つや二つあるだろうし、建前なんてどうでもよくなるほどディーが好きになっていた。
今すぐにでもディーが私のモノだという確信が欲しい。
誰にも取られたくない。
そんな単純で簡単な結論が出るのに一週間もかかってしまった。
しかし、もう決めた。
私は、ディーに思いを伝える。
もし、もしもダメだったら…お城で暮らす。
だって、勘違いだったらディーの顔を恥ずかしくてまともに見れないから…。
「ただいまー」ディーが帰ってきた。
ソファーに座らせるところまでは順調だったが、ディーがいつもよりかっこよく見えて中々話ができない。
ディーは何故か顔に微笑を浮かべていた。
「今だ!!」と思い話す。
「ごめんごめん。で?心の準備は出来たか?」
「あっ…あのね!!私と、付き合ってください!!」
ディーは固まってしまった。
「でぃ、ディーの優しさ、性格を知るたびに段々と好きになって…最近では、ディーのことしか考えられなくて…だから、私と付き合ってください!!!」
顔を赤くしながら言うマリィに対して、ディーの顔は始めは赤くうれしそうな顔をしていたが段々と暗く青ざめていった。
「…っ!!マリィの気持ちはうれしい。だが…俺は…お前を幸せにすることはできない…だから、」
マリィの瞳には涙があふれ過呼吸気味に話を聞いている。
ディーから紡がれる「いいえ」という答えはマリィを逆上させた。
「何よディー!!その半端な答えはっ!!嬉しいならッ…付き合ってくれてもいいじゃ…私をッ…幸せに…なんてッ…もう、幸せ…だったのに…!!」
マリィは泣き叫びながら身一つで古城を飛び出し、森を駆けていった。
「俺だって…お前と…」
「なら、追ってやれよ。ローレンスさん」
ディーの後ろに現れたのはブラッドだった。
「…なんのようだブラッド。今しがた別れたばかりだというのに…消されに来たのか?今の俺なら…」
「今のお前に殺されることは無いな。アンタのちゃちな過去を明かせば姫ちゃんがアンタの前から消えると思いこみ、怯え、目の前の幸せさえ突っ返した何もしない今のお前なんかに俺が殺せるわけがない。だろ?偽物のディーさん」
ディーは黙り、唇を強くかんだ。
「お前だけはきっと俺の過去を、忌まわしき過去を全て知ったんだろう?」
「ああ、アノールたちは調べるのを止めたが俺だからねーなんだ?だったら殺すか?」
「もういい…お前が調べきるなど、わかりきっていたことだ…だが、知ったのならわかるだろう…俺は、彼女に話しかけるのもおこがましい…人殺しなのだと…!!」




