二十四話:二人きりの舞踏会
0時の鐘が鳴り、とてつもない時間喋っていたのだと知った。
「やだ、もうこんな時間?ごめんなさいねマリィ、パーティーに出れなくて。」
私は首を横に振りニッコリを微笑む。
「とっても楽しかったよ。ありがとう二人とも。…私もそろそろ帰らなきゃ。」
「…住まないの?住んじゃいなよ。また、ここで一緒に。」
「………ここで住みたいけど、城の人たちにバレたら大変だよ。」と苦笑いしながら答える。
「それもそうだよね…うん。またね、マリィ姉さん。」
「また来るのよ。」
二人は最後にマリィを強く抱きしめ、見送った。
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「姉さん…」
そう呟くゼリルにパレットはニヤニヤしながら茶化す。
「なあにゼリル?マリィがもう恋しいの?もう一人の姉ちゃんならここにいるでしょうに。」
「なっ、違うわ!!」
「フフフ…ゼリルったら、歳をとったのにまだまだ青いわよね~。」
「は?なんでだよ。もう青くねぇよ。熟々だよ。」
「ん?いやぁ、城に帰ろうと思えばいつでも帰ってこれるのよ?召使とか他の目立たない名目で…それなのに帰ってこないってことは、今住んでる人ときっと恋仲なのよ。」
「はあ!?えっ、そ、そうなのかな!?」
「フフフ…なんだか身も心も若返ったみたいよ。この最高な気分のまま寝たらきっと肌も若返るわねー、美容のためにも早く寝ましょう。」
「若返るわけない、若返るわけない。どう見てもババアだもん。」
「御黙り!!」
-------扉を開けると、壁にディーがもたれかかっており一緒に入ったはずのディーとアノールがいつの間にか消えていたことに今初めて気が付いた。
長い長い城の廊下を歩きながら話す。
「楽しかったか?」
「うん。とっっっても!!ごめんね、長い間ずっとここで待ってたの?」
「いや、なに。楽しそうな笑い声を聞いているだけで苦ではなかった。」
それでも申し訳なく、少しうつむく。
「ごめんねディー。もうパーティー、終わっちゃってるよね?」
「別に、マリィが楽しかったらいいんじゃないか?それに、可愛いドレス姿のマリィを人目にさらすのは元々反対だったしな。」
ディーの歯の浮くようなセリフに顔に熱が行くのを感じる。
「しかし、折角だし一曲づらい踊っていきますか?お姫様。」
突然にやりと笑いながらお辞儀をしてくるディー。
手をポケットから出してもいない無作法なお辞儀だが、無作法な姫には十分すぎるお辞儀であった。
「曲も雰囲気も何もないけどね…」
ディーはクスリと笑いながら「目を閉じてお姫様」と恭しく言う。
「もういいですよ、姫。」
目を開けると辺りは花畑になり、どこからともなく音楽も聞こえる。
「すてきね…」
「ボクは魔法使いデスカラ…」
早速ディーは私の腰に手を回し、手を取りステップを踏む。
ディーの踊りはとても上手く、初めてとは到底思えなかった。
小さいころから習い、天津さえ夜会で何度も踊った私がリードされてしまう。
仕方のないこととはいえ踊りで顔を合わせたり、腰に手が回っていると考えると胸が高鳴る。
あっというまに曲が終わり、私たちは無言で見つめあっていた。
彼は端正な顔を私に近づける。
私は目をつむり、唇を快く受け入れた。
甘く官能的なキス、しかしどこか背徳的なキスだ。
後ろめたさや一物の不安を感じさせる危ういキス。
彼は我慢できないというように唇をむさぼる。
長く長くキスをした。
酸素が足りなくなり意識が遠のいていく、最後に見たディーの顔はいつもの冷静な顔ではなく飢えた雄の顔だった。
気が付いた時には自分のベッドの上。
それから一週間、私とディーは顔を合わせることすらできなかった。




