二十三話:再会
---数週間前のこと、アノールはパレットとゼリルにとある提案をするためにいつも2人のいるテラスへ足を運んだ。
2人はもう隠居をした身なので基本このテラスで口喧嘩をしている。
今日2人に話すのは秘密の話しなので傍にナタリアを置く。
「ゼリルおじさん、パレットおばあちゃん。」
もう数えられない程2人のところへ通っているので2人は笑顔でアノールを受け入れてくれる。
「どうしたのアノールちゃん。」
「もし、攫われた人が生きていたらどうする?当時の容姿のままで…」
アノールはいつも攫われたマリィの話しをすることを知っているので、この時もマリィの事だろうとパレットとゼリルは瞬時に理解した。
「泣いて喜ぶに決まっているわ。そんなことがあったらね。」
その言葉を待っていたかのようにアノールの瞳が輝く。
「じゃあ、おじさんとおばあちゃんにだけは教えてあげる…絶対に他の人には秘密だよ。もしも喋ったらナタリアが口を縫っちゃうからね。」
アノールはチラとナタリアを見、状況を2人にわからせる。
「…犯罪事じゃないといいな。」
「そういうことじゃないけど…あのね?」
アノールはゼリルとパレットにコソコソと耳打ちをする。
するとゼリルとパレットは信じられないというように目を見開き、固まる。
「アノール…本当かそれは。」
コクリと頷く。
「アノール、あの子が…生きているの?」
パレットは泣き出してしまう。
「パレット姉さん落ち着いて!どうりでアノールはマリィ姉さんの話ばかりをすると…」
「うん…あのさ、そこで相談なんだけど、今度の僕の誕生日パーティーに招いちゃダメかな?サプライズとして2人に会わせたいんだ。2人も会いたいでしょ?」
パレットとゼリルは悲しそうにうつむく。
「…でも私たちはもうこんなに歳で…あの子はガッカリしないかしら…」
「何を言ってるの?本当だったらおばあちゃんたちと同じように歳をとっていたんだから、何とも思わないよ。」
「俺は構わないよ。とても楽しみにしている。期待しているよアノール。」
そう言っていつも無表情のゼリルおじさんは珍しく笑った。
----私は目の前の人物がだれかすぐにわかった。
「…ただいま。ゼリル、パレット姉さん。」
そう呟くと自然と涙がこぼれる。
化粧が崩れることもまた目が腫れることも気にせず、2人を前にして立ち尽くしながら泣いた。
「マリィ、泣かないの…もう21歳でしょ…?」
そう諭すシワシワのパレット姉さんの目にも涙があふれていた。
「そういう姉さんにも涙がたまってるよ?」
ゼリルは子供のころのような悪戯っぽい笑みで指摘をする。
「…二人とも見た瞬間にわかったよ。全然変わってない。」
マリィは涙をハンカチで押さえながら告げる。
「そりゃそうよ。私は何時までも美しいんだから。」
自信を指さすパレット姉さんの手には血管が浮き出し、震えている。
「いや、パレット姉さんシワシワじゃん!よく言うよ。」
ゼリルの髪も真っ白で目には老眼か近眼かはわからないが眼鏡をしていた。
「御黙り!!」
パレットとゼリルの喧嘩が懐かしくて嬉しかったが、私のために若者ぶる2人にとても切なさを感じた。
そんな2人に私はただ泣きながら笑うことしかできなかった。
「マリィも見てすぐにわかったわ。そのパーティ―の時来ていたドレス、王家のティアラ…アノールは似ている子を連れてくるのだとばかり思っていたから…」
パレットは泣き始める。
「ババアの泣き顔なんて見たくないね。おまけにマリィ姉さんをティアラやドレスで判断するなんて姉妹愛足りてないんじゃないの?俺はすぐにわかったよ。マリィ姉さん全然変わってないし、あの時から…」
マリィ、パレット、ゼリルはそれぞれの60年について語りだした。
2人はまずあの事件のあとのことを話してくれる。
必死で捜索したがマリィは見つからず、何時しか死んだものと考えるようになったという。
「私たち家族はずっと弔いの鐘を鳴らさずに、ただ生きていることを祈って生きてきたわ…。数年の月日が経ってゼリルが王の座を放棄したので、私の夫が王の座に就き、ここまで来たの。マリィが居なくなってから、ゼリルはあまり笑わなくなってしまったのよ?ただのまじめな面白くない人になっちゃったんだから。」
「それは褒められてしかるべきじゃないのかな?でも本当、マリィ姉さんを失った後は全部がどうでもよくて、世界全てが呪わしかった。」
ゼリルはハハッと笑うが、マリィは笑えなかった。
「ごめんね二人とも…心配かけて…ごめんね…」
二人は「貴方のせいじゃない」と立ち上がって抱きしめてくれた。
見た目は変わっても姉弟の絆は変わらない。
私たちは再会を喜んで昔話に花を咲かせていた。
時には姉弟の私が知らない過去の話も…私は、終始泣いていたが、
それはうれしくて、楽しくて泣いていたのだ。




