十九話:誕生日
あの悲しき事件から数か月、季節はすっかり春だ。
この数か月、何事もなく平和に暮らしている。
毎日ディーとのんびり暮らし、ここ数か月アノールとナタリアは仕事仕事で来る頻度は週5から週2くらいに減ったがいつものメンバーが来たら遊ぶ。
そんな幸せな日々が続くそんなある日、アノールが自身の誕生会に私たち2人を招待したのだ。
「どう?マリィ。お城へ堂々と来れる日だよ?」
私たちの話しを聞いていたブラッドが「何の話ー?」と入ってくる。
「でもアノール、私はすぐにマリィ姫だってバれちゃうんじゃ…」
「ねぇ、何の話?」
ブラッドをスルーしていたら、ナタリアがブラッドに事の説明をしている。
「大丈夫だよマリィ!傍にディーさんが居れば心配いらないよ。」
「おいっ、俺が同伴前提か。」
ずっとソファーに寝転んでいたディーだが、聞き捨てならないと勢いよく飛び上がる。
「そうね…いざって時魔法で隠してもらえるし、…ディーが傍に居れば行けるわね…ね?ディー。」
マリィの気持ちはよく分かっていた。
久々に実家へ行きたいという気持ちや参加するであろう肉親の弟や姉を見たいのだろうと。
しかし、それでもマリィがバレてしまったら?
大ごとになったら?俺ではどうすることもできない。
「ダメだ。危険すぎる。」
「ディーさんって本当に過保護だよね…というかここまでくると独占欲?」
「なっ!!ちが…」
苦笑いしながらそう言うアノールに反論するディー。
「平気だって!!家に帰るようなものだし!ってか実際家だし、迷子にはならないよ?外見だって仮面とディーが居れば安心でしょ?ね?ね?」
ディーは二人の押しに負け、渋々内容を受け入れた。
3人で帰っているとき、ブラッドが不意に「俺の分の招待券は?」と聞いてきた。
二人は声をそろえて「そんなものは無い」とブラッドを一蹴してそそくさと帰っていった。
ブラッドは頬に流れる熱い水を感じながら寝床へ帰った。
そんなこんなでアノールの誕生会は2日後の夜。
マリィはソワソワしてその日は眠れなかった。
翌日、マリィは重要なことに気づいた。
「…ディーの服がない…」
マリィは元々着ていたドレスを着るとしても、ディーのスーツがなかった。
ディーはスラリと背が高く、意外と筋肉質で肩幅ががっちりしているので色系は似合わないだろう。
そして問題なのは髭と髪型だ。
それはきっちりと正して貰わなければとても誕生会には出られない。
「…とりあえずディー。お髭を剃ってごらんよ。」
見たこともないようなうすら寒い笑顔でディーに語り掛けるマリィ。
「出来れば髪の毛も全部後ろに上げてごらんよ。はいこれ、髪硬め剤ね。」
有無を言わせない迫力で洗面所に放り込まれるディー。
どうしようもないとため息を連発する。
「…はあ、剃るか…どうせ一日で生えてくるもんな…」
それから十五分、マリィは今か今かと待ち構えていた。
そして洗面所から戻ってきた時、一瞬だれか分からなかった。
ディーの顔は髭を剃ったことにより、目つきの悪さは気になるものの清潔感が出て若く見え、髪を後ろに上げたことにより一層威厳や大人の色気を醸し出していた。
「カッコいい…」
ふと出たのはそんな言葉だった。
「そうか?なんだか若作りをしてるみたいで変な気分だ…」
ディーは無い髭を探す様に顎をさすっている。
そこらに居る若者より断然カッコよくなったディーを見てマリィは満足げに頷く。
「さてと、イメチェンも済んだことだしディーの服を買いに行かなきゃね。」
マリィはディーの腕を強引に引き、町へ出かけた。




