十七話:狂った男
不本意とはいえマリィを二度も殺したディーの握力と精神力は0に等しかった。
それでもまだ終わっていないと、目を見開きすべてを見る。
見ると剥がれるように部屋が消え、ナイフを刺したマリィも砂のようにサラサラといなくなった。
辺りが無機質な部屋となり、現れる気絶している3人。
3人は息をしているがこちらからの干渉が出来なかった。
つまるところまだ、ゲーム中のようだ。
なるほど、『物語ゲーム』をクリアした後はみんなが違う夢を見せられて試練を乗り越えるのか…いや、そこまでが『物語ゲーム』といったところか…
「【へぇ、二体目の偽物にまで気づくなんて流石。しかし、君の仲間たちは目が覚めるかな?そのままゲームに飲まれて死んでしまうかもしれないね。】」
声はまだ悠長にそんなことを言う。
「もう元の世界に帰ってきたんだ。何故マリィを攫ったのかくらい聞いてもいいだろ。」
精一杯の虚勢を犯人に見せる。
ディーの精神はもうとっくに限界を超えていた。
あるのはマリィを助けたいという思いだけ、それだけで今のディーは動いていた。
「【いいよ、教えてやるよ。私はマリィ姫のことを人形にしようと思って連れ去ってきたのさ!】」
「……………………」
訳の分からない逝かれた言葉に絶句する。
「【マリィ姫を私の愛する人形にしようとしたんだ…人形なら私のいうことも絶対に聞くし、半永久的に美しさを保っていられる…そして、私を愛して私だけを見てくれる…マリィ姫が攫われたときは死ぬ気で探したものだよ…そして、すぐに見つけた。けどね、魔法で全く老けもしなく死にもしない彼女を見て、私はこのままでいいと思ったんだ。けど、君が目覚めさせてしまった。だったら予定通り人形にするしかない。起きていたらスムーズに事が進まないと思ったからね、だから見世物小屋まで招待したのさ。君たちを招いたのは他でもない、マリィ姫のお友達だったからだよ。マリィ姫だってお友達が欲しいだろ?だからみんなまとめて人形にしようと思ったんだよ。このゲームで死ねば眠るように死んで外傷が無くてね、人形が作りやすいんだ。失敗したとしても見世物として私が愛でていられるしね。】」
「逝かれてるね。姫ちゃんは生きているから美しいんだよ?最も、俺が言えた義理じゃないけど。」
「本当ですね。ブラッドも糞野郎ですけど人形しか愛でられない貴殿もとてつもないクズ野郎です。そしてなんて可哀想な人…」
「おば…マリィを返せ!」
いつの間にか目覚めたのか、3人はこぞって犯人に意見を言う。
「【あらら、みんな目が覚めちゃったのか…なら仕方ない。やはり当初の予定通りマリィ姫だけを人形にしようかな…】」
そう告げて声は消える。
「マリィが危ない!ブラッド!」
「勿論今、逆探知できたよ~」
「ナタリア!」
「たった今アノール王子を安全に城へ送ってきました。」
そう言われたアノールはいつものように空を飛ばされていた。
「よし…行くぞ。」
アノールを除く3人は満を持してマリィ救出へ向かうため
町を二つ超えた山の頂上へ向かった。




