十四話:ゲーム開始
「魔法が使えない?」
「【ピンポンピンポーン!せいかーい!この館では魔法は一切合切使えませーん!】」
不愉快なほど明るい男の声が暗闇にこだまする。
「誰だ!マリィを返せ!」
「【返せと言われて返す愉快な誘拐犯も居ませんし、誰だと聞かれて名乗る犯人もございませーん。貴方たちにはこれからゲームをしてもらいますよー?】」
「どうしてゲームをするんだ?魔法で殺しちゃえばいいのに…」
「…王子が知らなくて当然ですね。魔法にはいくつもの制約があるんです。その一つに、『魔法で人を殺してはならない』というモノがあるんです。…が、これには抜け穴がありまして…まぁ、今は説明を止しますが、これもその抜け穴で作った殺戮ゲームでしょう…。」
「【ふぅ~流石わかってるね~。今から君たちにやってもらうゲームは『物語ゲーム』だよ~ルールは簡単です。4人にお話しの中に入ってもらい、その物語を≪完成≫させれば≪終わり≫でーす。あ、ちなみにゲーム内でも魔法は使えないからね?まぁ、それは私も一緒なんですけどね~それでは、行ってらっしゃーい!!】」
4人は突然見たことのない森に飛ばされた。
服装も変わっており、アノールはピエロの恰好、ナタリアは姫、ブラッドは浮浪者、ディーは貴族の恰好をしていた。
「これで物語を≪完成≫させろって?笑えるね。」
ブラッドが珍しく真顔で自分の服装を見ている。
「それより、あの制約ってなんなの?」
「ああ、あれか。魔法使いには制約がいくつもあるんだ。一、『魔法で殺しはできない』一、『生き返らせることはできない』一、『長寿になることはできない』…まあ、これは捻じ曲げてしまったものもいるが…」
ディーはギロリとブラッドを睨む。
「まあまあ、それは一旦置いといて…今回のゲームに関してもこの制約が絡んでいるんだ。犯人は楽に俺たちを殺したいけど、魔法では殺せない。けどね、こういうゲームのイベントや指示で殺すことが可能なんだ。例えば、『この森を3歩歩くと死ぬ』っていう仕掛けがその辺にあるとしたらその指示通りに動いた俺たちは死んでしまうってこと。」
小難しい話にアノールは頭をひねる。
「しかし、それはあくまで一例です。もし、そんなシンプルに私たちを殺したいのならゲームという場面は選ばないでしょう。おそらく、私たちを悩ませて絶望させた挙句に殺したいのでしょう。」
「??どういうこと?さっきブラッド君が言ったみたいにそういう仕掛けを作ればすぐ殺せるじゃないか。」
「ゲームに魔法を組み込むとまた別の制約が出てくるんです。まず、ゲームマスターを含む参加者はゲーム開始から終了までは魔法が使えなくなります。それから、ゲームには必ず≪あがり≫を用意すること。つまりは必ずどこかに≪生きて帰れる道が存在する≫ブラッドが言ったような参加者が絶対にわからない理不尽な≪負け≫はゲームではありませんから制約に反しているのでできません。あとはゲームマスターである犯人の概ね思い通りです。」
「???」
「ようは、このゲームでは絶対≪生きて帰れる道≫が用意されていて、俺たち次第では勝てるってこと。犯人はゲームの設定は弄れ、負けた時は殺せるが、ゲームが開始したら全く設定を弄れず、あとは俺らが思うように動いてくれなきゃ意味がないってこと。こんなリスクを負うなんて…余ほど自信があるのか…」
「多分ね~じゃないとこんな『自作です!!』と言わんばかりのゲームに放り込まないでしょ。ひとまず散策する?」
4人は森の中を歩こうと決めた、その時だった。
「あれ?ディーたちじゃないの?」
聞きなれた声に4人は呼び止められる。
その声の正体はマリィだった。




