十三話:見世物小屋
段々新芽が出始める季節になってきた。
私はいつものように夕飯の買い物をしにフードを被りながら町を歩いている。
「ねぇ、そこの女の子!最近できた見世物小屋知ってる?」
「えっ!何それ!」
しまったと思った時にはもう遅く、軟派な男の言葉に答えていた。
その軟派な男はちゃんと男なのだが、何故か生気が感じられなかった。
「君そういうの好きな感じ??なら丁度よかったよ!これ!」
軟派男が差し出してきたのはその『見世物小屋のチケット』5枚。
「俺の友達がさぁ、急にこれなくなっちゃってさ、よかったら君にあげるよ。」
「えっ!本当!?ありがとう!」
もうすでに怪しいなんてさらさら思わず、とてもスムーズに受け取っていた。
「いやいや、俺が行けなくなっただけだから…あ、期限は3日後までだから気を付けてね!じゃあね。」
男の人はサササッと居なくなり、キツネにつままれたような気分になったが、手に置かれたチケットが居たことを証明した。
「と、言う感じでもらったんだけど…どう?5人で行かない?」
「却下だ。そんな危ないモノ貰ってくるな。なんでそう警戒心が足りないんだ?」
「ディーは固いなぁ、魔法使いが3人も居るんだよ?俺は姫ちゃんの意見に賛成だな~」
ブラッドは手にお手玉を乗せながら答える。
「僕はディーさんに賛成、なんか聞くからに怪しいし、その見世物小屋だって罠かもしれないよ?嫌だよ…」
「私はどちらでも、アノール王子、その見世物小屋の噂はたまに聞いていますが、とても面白いらしいですよ?しかし、マリィさんのチケットの入手の仕方から疑う気持ちも分かりますし、魔法使いが3人いて安全だというブラッドの気持ちも分かりますし…うーん…。」
ディーが指を鳴らして結論を出した。
「今回は見送りだな、行きたいのならこのチケットではない正規で買ったもので行こうじゃないか。な?マリィ。」
マリィは渋々引き、チケットをごみ箱に捨てた。
その夜、マリィは消えた。
気が付いたのは翌日の朝、中々降りてこないマリィを心配して部屋をノックすると返事がない。
急いで中へ入るとマリィは居なくなっていた。
ディーは森の中を走り回る。が、居ない。町を探すも居ない。
途中で合流したブラッドと手分けして探すが、居ない。
二人はもう一度家を探そうと古城の中を探していると、アノールとナタリアが血相を変えて走ってくる。
「ちょっと二人とも!これ見て!」
アノールが差し出してきたのは一枚の紙。
「【マリィ姫ハ預カッタ、返シテ欲シクバ見世物小屋へ4人デ来イ】どういうことだこれは!?」
怒れるディーを宥めながら話し合う。
「…マリィ姫?」
「ああ、ナタリアは姫ちゃんが本当に姫ちゃんなこと知らないんだっけ?あのね…」
マリィが何故姫と書かれているかについて、ブラッドは掻い摘んで説明する。
「まあ、ブラッドを殴るのは全て終わってからにして…どうしてこの犯人はマリィさんがお姫様だって知ってるたんでしょう…」
「そうなんだよ、王族だと僕以外知らないはずだし…マリィは僕ら以外友達がいないはずだし…」
アノールはオロオロと動き回る。
「オロオロするな。おそらく攫われたのは夜のうちだろ、アイツとは部屋が離れているし…予想外だった…」
「多分ねぇ、よく攫われる子だねぇ。」
ケタケタと笑うブラッドは悪びれもせずに自分の罪を吐露している。
「ブラッドにだけは言われたくないと思いますよ?でも、どうします?何故知ってるのかは後にしろ、罠であることは確かですよ?」
「罠だとわかっていても、行かなければ。マリィのことが心配だ。」
そういってディーは立ち上がり、古城を出ようとする。
「待て、行くならみんなでだよ。チケットも5人分だったということは相手は俺たちのことを知っている可能性が高い。それに、いくらアンタとは言えども一人じゃ危ない。」
「もしかしたら4人でないと門前払いを食らうかもしれませんし、それに人数が多い方がいいことに越したことはないです。」
4人が出した結論は、みんなで助けに行くというものだった。
早速4人は装備を整え、捨てたチケットが示す見世物小屋の場所へ急いだ。
見世物小屋は町のはずれ、おまけに廃墟を改装したような物々しい佇まいで立っていた。
4人がドアの前に立つとギィッという音を立てながら扉は開いた。
「すごいね…待ってましたって感じ。」
膝が笑っているアノールの肩にナタリアが手を置く。
「王子、大丈夫です。何が起こっても私がお守り致します…」
「行くぞ。」
4人は恐る恐る中へ進んでいく。中は暗く何も見えない。
「俺が灯りを出すよ。…アレ?」
ブラッドが灯りを出そうとするが出ない。
「アレ?」
「……。」
ディーとナタリアがブラッドの代わりに灯りをつけようとするも
やはり灯りはつかない。




