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活かされない記憶。

作者: 夜凪

投稿して逃亡します。

何のために前世の記憶なんてあるのかしら?


だって、国が違えば歴史は違うし(異世界だったら尚の事)立場が変われば覚えなければ成らない教育だって変わる。

大人の思考回路があれば学習がしやすい?

余計な雑念も増えるんですよ?

必死になるから、確かに学習速度は増しましたけど。

無邪気な子供時代を犠牲にしてまで、得るほどのものだったのかは疑問が残りますね。


前世の記憶を活かして改革って言ったって、専門職についていたわけでもない一般人ができる事なんてたかが知れてます。


食テロ?

この世界のお食事もとっても美味しいですよ?ありがたい事です。

好物は唐揚げです。



何て事を徒然なるままに考えていたら、話を聞いているのかと怒られてしまいました。

そういえば、囲まれて非難されてる真っ最中でした。

あまりのアリエナイ内容につい現実逃避してました。


目の前には、私の生まれた時に定められた婚約者である2つ年上の生徒会長様、及び取り巻きズですね。

彼らの背中に隠れる様に、可愛らしい容姿の女性がいます。

まぁ、私より2つ先輩なので可愛らしいは失礼かもしれませんが。



どうも、知らなかったですが、この世界は乙女ゲームかそれに酷似した世界だった様です。

そんなのゲームに興味なかったし知りませんよ。

前世の私はアナログ派だったのです。


当時の友達に面白いからと二次創作的なものは読まされた事はありますが、あまり興味を持てず流し読みしました。

私、推理物が好きなんですよね〜。

しかし、1人の女性に多人数。コレが噂の逆ハーってやつですか?

みんななんだか目がいっちゃってて怖いですね。


2学年上で何か恋の鞘当て的騒動が起こっているなぁ、とは思ってましたけど、学年違うと校舎が変わるので以外と接点ないんですよね……。

恋話好きでアンテナ張ってる人でも無いと、詳しくは伝わってきません。

そもそも、今世でも本の虫と化していた私は暇さえあれば図書室に篭っていたので、よく知らなかったんですよ。


そういえば、お友達が「あなたの婚約者大変よ」とか言ってましたけど、この事だったんですかね?

冷静で優秀な方と認識していたので、私の助けなど無くても切り抜けるだろうとスルーしてましたけど。

ていうか、2学年上の「大変」をどうにか出来るほど優秀でも無いですしね。




そんな風に良くも悪くも無関心だったのがいけなかったんでしょうか?

本日、昼食後に日向ぼっこをしていたら突然囲まれました。

で、糾弾の嵐です。


簡単に言うと、皆さんの後ろに隠れている女性を虐めていた、と。

だから学年違うのにどうやって。

私の生活の中に、他学年の校舎まで行って悪さをする程の時間的余裕もアクティブさも無いですよ?


口を挟もうにも皆さんの勢いが凄すぎて、どうにもタイミングがつかめません。

「弁明すらしないのか」「可愛げの無い」などと言われても、何か喋ろうとすると誰かが言葉をかぶせてくるんですもの。どうしろと。


そうこうするうちに、彼らの一方的な糾弾はクライマックスを迎えた様で。

「お前の様な腹黒い女とは一生を共にする気は無い。婚約は破棄するので、もう2度と俺の前に顔を出すな」と、高らかに宣言されました。


………ドヤ顔されても………どうしたら正解なんでしょう?

場に沈黙が満ちます。

ようやく静かになって、コレは私の言葉待ち、ですか?


「………はぁ」

どうにも曖昧な相槌になるのは致し方無いかと。

だいたい、婚約も当時仲が良かったおじいちゃん達が勝手に決めた事で、「両家の利益にもなるし、ま、いっか〜」な軽いノリで両親が頷いて結ばれたものなんですよね。


おじいちゃん達が仲よかったので、偶に顔合わせはしてたけど、遊びたい盛りの2つ上の男の子と話が合うはずも無く。

結局、碁を指すおじいちゃん達の横で1人のんびり本を読んでいたのが常の状態でした。そんなんで何かが生まれるはずもありません、よねぇ。


そもそも、物心ついた時には前世の記憶があった身としては、子供が背伸びして可愛いなぁ〜、くらいしか思わなかったんですよね。

普通なら、もう少しときめいても良い場面は幾つかあったんですけどね……。


やっぱり、前世の記憶って弊害にしかならない様な気がしてきました。

やれやれですね。


もっと、泣いてすがるとかの愁嘆場を期待されていたみたいですが、無理ですよ〜。

なんて思ってたら、間が持たなくなったのかしかめっ面のまま踵を返して行ってしまいました。





「………なんか、すごかったね」

一緒にまったりしてたお友達がポツリとつぶやきました。

「………ですね。空君の存在、丸無視でしたねぇ」

思わず返すと苦笑いされました。


「高等科ってなんか面倒くさそうだね。僕、外部受験しようかなぁ」

「空君いなくなると、本のお話出来る人が居なくなっちゃうんで困りますね」


一応、立ち上がっていたベンチに座りなおして水筒のお茶を飲みます。

あぁ、おいしい。


うちの学校、中高一貫なんですよね。

1学年から6学年と数えますが、まぁ、他校との兼ね合いもあるので、校舎も違うしエスカレーター式の学校って感じですかね。


「じゃあ、さくらちゃんも一緒に受験する?星陵とか、新しくて施設も充実してるみたいで、楽しそうなんだけど。図書館も蔵書量が凄いって」

「………それは惹かれますね〜」

新しい学校の図書館。

うっとりする響きです。

婚約破棄もされるみたいですし、このままだと1年同じ校舎に通う事になるので、微妙に気まずそうですし、ね。


「それも楽しそうですね。帰って親に相談してみましょう」

幸い我が家は放任主義だし、成績も悪く無いので落ちる事は無いでしょう。


「じゃ、先生のところに行って資料貰って来よう。なんか、ワクワクしてきた」

手を引いてベンチから立ち上がらせてもらい、そのまま職員室へ連れて行かれました。

ニコニコ笑顔がお散歩せがむわんこみたいで癒されますね。




その後、ションボリとしたおじいちゃんに生贄として空君を差し出してみたところ、碁の弟子が出来たと喜んでいたので良しとしましょう。


今日は何の本を読もうかな♪



読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ親の口約束程度の婚約みたいだし気の合う子と付き合った方が良いに決まってますなw
[一言] おじいちゃんの顔立てて婚約結んだのに 馬鹿男が親にも相談せず一方的破棄したら両家の父母は激怒するでしょうね 空君は空気的立ち位置だったのでしょうか? 攻略者連中は気にも留めてなかったようで…
[一言] 相手がその後どうなったかが気になる。 逃亡せずに続きお願い
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