33Lの液体を運べ
色々見てて、こんなんでも良いんだ?という結論にいたりて、飯を食う。
何がどうして、こんな糞重たいものを運ばなくてはならないのか?リ
カサカサ鳴る、ビニール袋に入ったペットボトルを見ながら僕は鬼気迫る勢いで坂を登る。
僕が運んでいるのは、ペットボトルに入った33Lの液体だ。
しかし、そのペットボトル達には何故かフタがついていない。
この峠を超えたら、海までは一本道のはずだ。
街灯も無いこの坂を、ビニールの擦れる音と水音をさせながら進んでいると、前から車のヘッドライトが近づくのが見えた。
僕は慌てて、横の薮に身を潜めじっと様子を伺う。
ビシャ!
嫌な音がして、液体が足にかかった。
車はスピードを緩めることなく、僕がいた場所を通り過ぎていった。
「少し零れたな…。まぁ、まだかなり残っているだろう…。」
僕は、ゆっくりと道に這い出すとビニール袋をまた持って坂を登る。
「こんな調子じゃ、着いたときに何L残っているか、分かったものじゃないぞ…。」
残りは何Lだろうか、少なくとも30Lはある気がするが。
クソ、靴の中が濡れて気持ちが悪い、グチュグチュと嫌な音を立てて僕をつけて来る。
もう、腕も棒のようだ。このままでは、着くこともできないんじゃないのか?
そうだ、少し液体を捨てよう。最悪の事態よりはましだろう。
僕は思うが早いか、ペットボトルを脇に投げ捨てた。
半分くらいか?まだ、重たいな。5本もあればいいか?
10Lで十分だろう?え?何?聞こえない?あ、そうか、うん…。
僕が最後の一本を捨てようとしていると、さっき行き過ぎた車が戻ってきた。
僕は薮に隠れて、車が通りかかった瞬間、最後のペットボトルを、フロントガラスに投げつけた。
ガッシャーーーン!!!!
物凄い音と、ブレーキ音、ゴムのすれる音とともに、車はガードレールに激突した。
運転手を、引き摺り下ろす。
まだ、息があるようだ。殺すのはまずい。殺人犯なんて笑えないからな。
とりあえず、あの崖下に落として隠しておこう。
僕は、疲れた体に鞭を打って、運転手の男を、ズルズルと引きずってきた。
かなり高いな、数十メートルはある。ここなら、見つからないだろう。
こいつは携帯電話を持ってるな。目が覚めたら、自力で出られるだろう。
そう思うと、僕は崖下に男を隠すため、突き落とした。
僕は何で男を引きずったんだ?あぁ、そんなことより、液体を運ばないと。
僕は、さっきの場所まで戻って、ペットボトルを抱えた。
さっきの車に乗ろう、走ることくらいできるだろう。
よし、坂を登り終えたぞ。あとは、海だ。ん?4本、あれ?1本何処だ?
あぁ、そうだ、手を洗ったんだ。あのとき一本使ったのか、通りで手がベタベタするわけだ。
33Lあった液体も、残り8Lだ。
リモーネ臭がする。そうか、リモーネ臭がするわけ無いな。
いよいよ、僕も危ないのか?いや、まだ頭はまともだ。1+1=2
ほらね。
嫌だ、父さんみたいになりたくない、死にたくない。そうだ、液体を運ぼう。
リモーネ臭がする。頭が変になりそうだ。
運び終えたら僕は自由だ。なんだ、この車?ボロボロだな。
飛ばしすぎたか、零れた液体がシートを濡らす。
リモーネ臭がする。コントローラーからする。
残り1Lくらいで、僕は死ねる。あぁ、嫌だ、朝がくる。
そう言う事、知ってた?
色々見てて、どうでもよくなったというか、コレでも負けた気はしない?という印象を受けた。
つまり後悔はしていないが、別にどうでもいい中の一つ。