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あの蛇男とカミーリィヤ王女が2人で居る所を本当によく見かけた。 何時だってあの無垢な天使を護る様にあの蛇男は温かい瞳で王女を見つめていた。


「 ラファエル見て! あの小鳥ったらとても楽しそうに飛んでると思わない? 」

「 お前は本当に昔からそんな訳の分からないことばかり言うな 」


そんな声が中庭から聞こえてくる。


彼らは本当にいつも2人で過ごして居た。 この前行われていた式典でも、鋭い眼光で貴族の男どもが寄り付かない様に睨んでいたし、子供の様に騒ぐ王女を後ろから呆れた様な眼差しで見守っていた。 それはもう、本当に愛おしそうに。


「 ラファエル! ラファエル見て! 」

「 何度も大声で呼ばずとも後ろに居るだろう 」


手を引っ張る王女様に、機嫌を損ねる事もなくされるがままの蛇男はあの王女のそばに居る時は少し微笑むのだと最近知った。


「 ほら、はしゃぐからそうなるんだ。 今日のドレスの裾を考えれば分かるだろう? 」

「 危ない、転ぶ所だったわ! ラファエルのお陰ね、本当にありがとう 」


無邪気に抱きついて笑う王女様は、本当に無邪気で馬鹿なんだろう。


『 あの方は小さな頃から、本当の弟の様にカミーリィヤ様を大切にしていらっしゃる 』


そんな事を言う城の人間も、総じて馬鹿だと思った。 どう考えたって兄弟愛なんかじゃないだろう。


ーーひとりの男として、王女を愛してる。


意外だと思った。

けど、小さな頃からのその感情を貫くその蛇男を少しだけ見直した。


私は『愛』と言うそのくだらない物がこの世で一番嫌いだ。 存在しないと思っている。 だから、精々何処までそれを貫けるのか見届けてやろうと思った。 そういうと聞こえが悪いが、捻じ曲がった私なりに、応援してやろうと思ったと言うことだ。


「 まぁ、ポチ! 良かったら御一緒なさらない? 」


私を見つけた天使が、満開の笑顔で蛇男にギュッと抱きついたままそう叫んでくる。 蛇男は2人の時間を邪魔されて酷く私を憎らしそうに射抜く。


「 ごめんなさい、王女様! 私今から侍女長の所に向かおうと思ってたんです! だからまたお誘いして下さい 」

「 そう…残念ね。 えぇ、今度またお誘いさせて! ねぇ明日はお茶会をいたしましょう 」


天使に大きく頷いて、私は自室に戻る為にその場を後にした。



ーーーーーー

ーーーー

ーー


「 お前、侍女長に用事があったのではなかったのか 」


その日の夕方、王女様のお側を離れていた蛇男が初めて向こうから声をかけて来た。 廊下を歩く侍女が蛇男を見てうっとりと頬を染めている。

私は蛇男のその質問に言葉を返す事はなく、ただ貼り付けたポチの笑顔でニコニコと笑う。 居心地悪そうに蛇男は視線をそらした。何故、私があんなことを言ったのか察しがついたのだろう。


「 では私は此処で失礼致しますね」


お辞儀をして、巻きを返した私にまた蛇男は声をかけて来た。


「 ……悪かった 」

「 え? 」


目線を泳がした後、私の目を見つめて小さな声で言ってきたその人に何のことか分からずに素で首を傾げる。


「 跡にならなくて良かった、恐がらせてすまなかった 」


蛇の様な目でジッと見つめる先は、包帯が取れた私の首筋だった。 成る程、そう言うことか……やっと謝ったか。 思わず自然と笑顔が出てしまう。


ーーその笑顔を見て何故か蛇男が目を少しだけ見開いた。


私はそのまま何も言わずその場を後にしたけれど、何だか意外と気分が良かった。


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