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変わらない挨拶

オリフィエル目線のお話です。




小さな頃に妹が欲しいと地団駄を踏んだ事が、そういえば何回かあるかもしれない。 まぁ、そんな事も忘れて大人になってそれなりに恋愛して、最高で最愛の女との間に可愛い子供が産まれた。


長男の俺には結局二人の弟が出来たけど、女じゃなくて男でもやっぱり兄弟となると無条件で可愛い。 何を考えてるか分からない世渡り上手な末っ子も、兄弟の中で実は一番優しい真ん中の弟も比較なんて出来ないほどに大事な弟達だ。


妹が欲しいと怒っていた頃なんてすっかり忘れていたあの頃に、突然可愛い妹がやって来た。紆余曲折あってあの子は以前の捨て猫の様な警戒心が薄くなって、気付けばそれがなくなっていて。そして俺達家族の真ん中にはいつもあの子の笑顔があって、その隣には必ず真ん中の弟が寄り添っている。


そんなあの子の生い立ちを俺達はあの子自身の口から聞いた。 それは想像するのも辛い半生で、どうしてあんな可愛い子がそんな目に合わなければいかなかったのかと、震える拳を握りしめた。 あの子はそんな俺達とは対照的に淡々と事情を話していたし、ヘソの辺りに残るあの火傷の跡も見せてくれた『 家族に隠し事は無しだって聞いたことがあるの! 』あの子のその時の表情は本当に真っさらな何も知らない子供の様で。 あの子と真ん中の弟が眠った後、母は声をあげて泣いて父は静かに目を閉じて、末っ子は椅子の上に足を上げて俯いて、私の妻も唇を噛み締めて静かに瞼を拭っていた。


俺はそんなあの子が屋敷に来てから、変わらず続けていることがある。 これは多分ずっと何時までも変わらないしそれに俺の全ての想いを込めている。


この屋敷に来てくれてありがとう。

妻や子を大切にしてくれてありがとう。

俺の妹になってくれてありがとう。

笑った顔が一番可愛い。

人は信用しても大丈夫なんだよ。

俺はそんな君が大好きだ。

お兄様と呼んでくれるのが嬉しい。

ずっと頑張って生きて来たんだね。



それは、日を重ねるごとに意味を増やしていくけれど、それでも俺は何時でも同じ様にそれに全ての想いを込めている。



「 お兄様、おかえりなさい! 」



大人になってから出来た初めての妹は、小さな頃に想像していた以上に可愛くて、俺は多分過保護な兄だと思う。でも、間違えて違う世界の違う親の元で産まれてしまい、その所為で俺たちと言う本当の家族に逢えるまで随分我慢させてしまった妹にはこのくらいの気持ちじゃ足りない程かもしれないなんて思えたりもする。



「 お兄様ー! 」



俺に手を振る妹は、やっぱりどの家の子よりも一番可愛いと自負出来る。真ん中の弟とお揃いの耳飾りを可愛い妹はユラユラと風に靡かせて目一杯手を振ってくれている。


だから、そんな妹に全ての想いを込めて俺はやっぱり何時もと変わらずこの言葉をこの子にかけ続けるだろう。





「 おぉ! 椿、また綺麗になったな! 」






多分、この挨拶はずっと変わらない。













~変わらない挨拶~


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