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あの蛇男は、侍女長やエドワード様が言っていたとおりの人物らしい。 もうお腹いっぱいだとゲンナリするほど、城を歩けばあの蛇男を讃える噂話が聞こえて来た。


部下の得手不得手を一番に理解して、的確なアドバイスをしていることや無愛想だが決して感情論で怒ったりしないこと。 また、随所で部下に選択を選ばしたりなど教育も文句なしであること、庶民や貴族だからと言って隔てることは無いこと。 怪我を負った部下を誰よりも手厚く看病すること。


『 カミーリィヤ様はお幸せですわね 』


皆、口を揃えてそんな事を言っていた。 あの蛇男が8年ほどあの姫様の近衛騎士として姫様を護っていることをその噂話で初めて知った。 顔には出さないが、偉く過保護らしい。


「 ラファエル様、先程は誠に申し訳ありません……何とお詫び申し上げて良いのか 」

「 気にするな、練習となれば良くあることだ。 お前はコレを経験して更に精進すれば良いだけの事。 期待している、今日はゆっくり休め 」


訓練場の前を通りかかると、そんな声が聞こえて来た。 よく見ると蛇男は頬にガーゼの様な物を充てている。 あぁ、察すると、部下のミスで怪我をしたのか。 へぇ、淡々とした口調だが確かに怒りは全く感じられない。 あの冷酷さは他人である私だけに向けられた物なんだろう。



まぁ、それが普通。



私は悟られない様に、静かにその場を後にした。



ーーーーーーー

ーーーーー

ーー



「 また貴様か 」


それはこっちの台詞だ。

目の前の蛇男はその三白眼でギロっと私を睨みつけている。 床をズルズル這うそのマントは邪魔じゃ無いのかといつも思う。


「 まぁ、その頬は如何なさったのですか⁉︎ 」


まぁ、どうせ貴様には関係ないとか言われるんだろうと思いながらも私はポチで有り続ける。 すると、意外な返事が返って来た。


「 訓練中に手が滑った。それだけだ 」


そのまま、コツコツと靴を鳴らして立ち去って行った蛇男の耳元の装飾が揺れ動いていた。 意外な返答に思わずその後ろ姿を見送る。 ほぉ、部下の事を言わず自分のミスだと。 噂通りのいい方じゃないか。




ーー心底、苦手なタイプだ。


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