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カミーリィヤはあの王子ととても順調に逢瀬を重ねているらしい。


「 ……ああ、もう夕食の時間か 」

「 何回も蛇男~って呼んだのに、アンタ気付かないくらい仕事に夢中だったのね 」


蛇男の部屋の扉を開けると、書斎のの方に篭り、蛇男は難しい書類と睨めっこをしていた。 私の声に気付いて顔を上げたそいつは眉間に手を当てマッサージをしている。


寝食を忘れそうなほど仕事に没頭しているのは、カミーリィヤの事を考えたくないからなんじゃないかって、私はずっとそう思っている。


「 アンタさぁ、没頭するのも良いけど根詰め過ぎると後で辛くなっちゃうわよ 」


壁に持たれて腕を組みながら呆れた顔で言う私に、何故か蛇男は表情を緩めて口角をあげる。


「 お前は心配を遠回しに伝えるのが好きらしいな 」


立ち上がって結っていた髪をほどいた拍子にハラハラとその綺麗な髪が揺れて、その口調は何だか嬉しそうで、私はむず痒くなってしまう。


「 あのままだと朝まで没頭してしまう所だった……呼びに来てくれて助かった。 さあ、行こうか 」


そう言ってスタスタと私を通り過ぎて、扉へ向かう蛇男の後ろ姿に私は心で問い掛ける。


ねぇ、アンタは本当にこのままでいいの?



ーーー



「 ……良いって、本当にもう大丈夫だから 」


その言葉に物凄く不機嫌そうに眉を吊り上げる蛇男が目の前に居る。 一緒に眠る事を断った私に、少しだけ憤慨した顔を浮かべているようだ。 だって、このままではいけない……カミーリィヤはもしかしたら、蛇男が直接気持ちを伝えれば、今ならまだこの人の腕の中を選ぶかもしれないのに。



ーーだって、あの顔を見てしまったから。



そんな私の思いなんて露知らず、蛇男は抗議するように何故か寝台の横の椅子に足を組んで座り、私を睨みつけて来る。


「 ……ねぇ、アンタは私に同情をしてる場合なんかじゃないんだよ 」


ああ、また蛇男が怒った顔をする。


「 同情などでは無いと何度言えば分かるのだ? 」

「 分かってないのはそっちだよ……とにかく、良いから、ね? アンタは自分の部屋で休みな 」

「 お前は少し黙れ……疲れた。 早く寝るぞ、蝋燭を消すからな 」


私の言葉を遮って寝台に入って来た蛇男なそのまま蝋燭を消して、枕に顔を埋める。 その人の背中に私は何故か胸が痛くなってしまう。


……無理やりにでも、部屋に連れて行く事だって出来るのに、私は何故それをしようとしないんだろうか。

規則正しく揺れる背中を、私は離さなければいけないのに。


ーーこの人の熟した長年の想いを、成就させてあげる為にも。




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