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あの後散々泣いて私に詫びを入れて来る王女様を許した。 と言うか、助けたのは勝手にしたことだし別にどうでも良いんだけれど。 気が済んだ王女様はすっかり、今日やってくる愛しの王子様しか頭にないんだろう。 そんな顔をしてる。だから、私はチラッと蛇男を見てしまう。 蛇男はいつも以上に顔に表情が無い……あぁ、どうしよう。


「 あ、いらっしゃったわ! さぁ、早く外へ向かわなきゃ、皆早くお出迎えの準備をなさって! 」


キラキラと少女みたいに、私達の隙間を通り過ぎて行く天使を見送る。


ーー蛇男は唇を噛み締め過ぎて、その唇の色が悪くなっている。



ーー


「 まぁ、とても素敵です! こちらはどういった時に使う物なのかしら 」

「 手紙で書いたように、こうやって使うですよ。 ほら、手に持って 」


和気藹々と、何だかむず痒い空気が流れる部屋の中、私はもう視線の先を見れなかった。 王子様と王女様のその口調や空気感は、言葉がなくても痛いほど分かる。 蛇男はこの部屋に来ることはなかった。 エドワード王子や国王陛下はそんな二人を暖かい眼差しで見守っている。


「 王家のお邪魔をしたくないので、私は此処で失礼致しますね 」


そう侍女に耳打ちして、静かに壁際に設置されていた席を立った私を、エドワード王子だけがチラッと静かに見て来た。


そして、フラフラと自室に戻りがてら王宮の中を歩いていた時だった。

今日は誰も居ないはずの訓練所から、けたたましい音が聞こえて来て、そっと扉を開けると蛇男がいた。


ーー顔を抑えてうずくまっていた。


辺りに色んな物が乱雑に散らばっていて、何だか悲しくなった。あの王女様は、その無邪気さで、小さい頃からそばにいてくれた大切な人を傷付けて居ることに気づいてないのだろうか。


気づかれない様に、そっと扉を締める。 蛇男のその悲しそうな姿が頭から離れなかった。 王女様は随分と世渡り上手だと思う。 愛されて、愛されて、愛されて……愛の無駄使いが出来る人なんだ。 贅沢なのはその地位や財産だけではなくて。


自室に戻った私は、何でか疲れていた。 本当に何でか疲れてしまった。


「 そんなに有り余ってるならさぁ 」


そのあとは言えなかった。

それ以上言うと、本気で自分が惨めに思えてしまうから。



ーー私に少しだけで良いからわけてよ。



そんなこと、言えなかった。


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