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「 申し訳ありませんラファエル様 」
「 いや、構わない 何時ものことだ」
王女の今の護衛が申し訳なさそうに、眉尻を下げている。 蛇男の腕の中にはスヤスヤ心地良さそうに眠る天使が居る。 何でも眠くなったからと眠ってしまったそうで。
【 ラファエルが寝室まで運んでくれるわ、いつもそうだもの】
そんな風に言って眠りこけるなんて、本当に嫌な女だこいつは。
「 ……全く、私はお前の兄でも何でもないんだぞ 」
そんな王女様に呆れながらも蛇男は、その重みを幸せそうに噛み締めている。 ギュッと眠ったまま無意識に蛇男の首に腕を回して甘える王女はとても幸せそうな顔で眠ってる。
「 ふふふ、王女様は天使みたいですね! 」
「 ……子供なだけだろう 」
分かってるよそんな事、でも、ポチならそう言うんだよ。
「 カミーリィヤ、あまり暴れるなよ 」
呟くように言うその声は酷く穏やかで優しい。 こういう無邪気な女が最終的にはなんだかんだ愛される。 私はそれをよく知ってる。 ただ、ポチは本物じゃ無かったから、それを貰えたことは無かったけれど。
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スヤスヤ眠る天使をそれはそれは壊れものを扱う様に大切に、寝台へゆっくり寝かせる。 蛇男の耳飾りがまた涼し気な音を立てる。
「 本当によく眠っていらっしゃいますね、とても可愛い… 」
クスクス小さく笑う私に、蛇男が困った様に息を吐く。 その癖やはり、温かさが含まれていて。
「 おい 」
「 はい 」
何時もの様に睨んで来る蛇男が、小さな声で私の顔を見て言ってきた。
「 ……仲良く、してやってくれ 」
「 え? 」
「 こいつは貴様の事が好きで仕方ないらしい。 立場上、気軽に話せる女も居ないんだ、だからどうかこの先も仲良くしてやって欲しい 」
そう言ってチラッと王女を見るその横顔はとても穏やかで。 そんな蛇男を見ると、私は何だか少しだけ嬉しくなる。 あぁ、もっと王女を愛してる所を見せてくれと。
「 貴様とこいつは確かに性格が少し似ている様だからな……宜しく頼む 」
そうやって、誰かに頼むと言えるほどにこの女が好きなんだろう。素晴らしい事じゃないか、だからこれからも精々足掻いてくれ。 この女を振り向かせるまで足掻きに足掻きまくってくれ。
「 似てますか? 」
「 ……あぁ、だから気が合うのだろう 」
私は腐ってしまったのにそれを認めない可哀想な枯れた花、王女は今尚イキイキと水を与えてもらって人を喜ばす美しい花。
「 最近、皆様に似てるってよく言われます 」
「 そうだろうな 」
ポチの仮面を剥がした私なら、きっとこんな台詞は言ってもらえなかった。 きっと。