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「 もう! ラファエルったら、またお説教ばかりなのね! 」

「 お前は朝から騒がしい 」


目の前で楽しそうにプンスカ怒ってる王女様に、なんだかんだ蛇男が微笑んでる。 感謝しろよ、蛇男。


私は蛇男が王女様に会える様に、何かと理由をつけてこの大嫌いな女に会いに来ている。 早く、愛を教えて欲しい。 身分に囚われないでこの馬鹿で可愛い天使の手を掴んで欲しい。


「 ポチはどう思う? ラファエルはお説教垂れてくるから貴女も大変でしょう? あ、でも嫌いにならないでね、彼はこう見えてとても優しいの 」


花の様に笑う王女様には、あの花は本当に相応しい。 きっとあの赤と白もこの王女様と同じ名前を持って誇らしく思うだろう。 天使に褒められた蛇男は唇を噛んで髪を掻き上げている。 可哀想に、また振り回されてる。


王女様は何故25歳になった今でも、独身を貫いているのか。 案の定この国では20歳くらいで大体伴侶を決めるらしい。 それを聞くと王女様は笑って答えた。


「 エドワードやお父様と離れるなんて、とても寂しいわ! 」


そして国王もそんな可愛い娘の我儘に、無理やり婚姻を結ばせる事も無かったらしい。 酷く、馬鹿げてる。


「 それに、ラファエルと一緒に居られなくなるなんて耐えられないわ! だってポチ、私達は本当に小さな頃からずーっと一緒だったのよ? 」


ほら、無邪気で無垢な天使は残酷にも鋭利な刃物になるんだ。 蛇男が可哀想で仕方ない。 こうやって王女から逃れられない。


「 ねぇ、ラファエル! 私達はずっと一緒だったものね 」

「 ……あぁ、そうだな 」


蛇男が心を乱すのは、この天使にだけ。 早く私に教えて欲しい。 この愛の行く末も、どれだけこの愛が強くて本物なのか。 早く、教えて欲しい。


「 ねぇ、ポチのお父様はどんな御方だったの? 」

「 どうしたのですか急に 」


コロコロと話題を変える犬みたいな可愛い天使は、あの王子が言うとおりポチに似ているかもしれない。 私は、多分こうなりたかった。


「 私のお父様は本当に過保護でいらっしゃるのよ、何をしてもお説教なさるし、殿方とお話しするのも心配そうに見ていらっしゃるし… 」

「 カミーリィヤ、お前はこの国の王女だ。 当たり前だろう 」

「 王女である事は自覚していますわ! だからと言って全てを監視するのも如何なものかしら? 」


喜怒哀楽を此処まで顔に出せるって凄いなぁと、感心してしまう。 あぁ、本当に護られて生きてきた女は此処まで自由で純白で居られるのか。 私はどす黒い、心も身体も。




ーーーーーー

ーーーー

ーー



蛇男がイライラしてる理由はただ一つ。 今日、王女様の縁談相手がこの王宮にやって来てるからだ。


窓の外で王女と縁談相手の王子が寄り添って歩いているけれど、はたからみても分かるほどに王女はご機嫌斜めだった。 それを見て、少しだけ安堵した様なため息をつく蛇男。


声が聞こえなくてもわかる。 あの馬鹿で可愛い王女はきっと、嫌われる様に散々我儘を言って相手を困らせている。 そうやって今までこと如く縁談を破断に持って行ってるらしい。 困った様に私に説明する蛇男は、自分が今までで一番饒舌な事に気付いていないんだろう。 その顔に安心し切った何かを貼り付けて、その癖淡々と説明してる蛇男にも、王女にも諦めに似た気持ちが出てくる。 早く行動を起こさないとどうなっても知らないぞと。


ーーーーーー

ーーーー

ーー



「 だって、嫌ですもの! あんな姑息な王子と夫婦になるなんて耐えられないわ! 私にはラファエルが居るもの 」


縁談が終わった後、そう言って私達の前で和かに笑う王女は残酷だと思う。 蛇男は照れた顔を隠して呆れたため息を吐いている。


この王女は少女のまま25歳になったんだろう。 だから、そうやって残酷な事をそんな笑顔で言えるんだ。


「 お前の面倒は私ぐらいしか見れんだろうな 」

「 あら、確かにそうだけれど言い方が少しだけ意地悪ね! 」


小さな頃からずっと、そんな曖昧な関係を続けて来たんだろう。 だから蛇男もきっと安心していたんだ。


「 でも大好きよラファエル! 」


そうやって無邪気に飛びついて来る王女様を宝物みたいに受け止める蛇男。 ねぇ、カミーリィヤ……私やっぱりアンタが大嫌いだわ。 どうして、こうも違うんだろうね。 アンタが表なら私は裏、アンタが花なら私は地面を這いつくばる根っこだ。 大事な養分を全部奪われて、それでも無様にそれをまた求め続ける。


「 ねぇポチ! ロビィリャの花が貴女の世界では私と同じ名前だと言うのは本当⁉︎ ラファエルが今教えてくれたのよ! 」


思考を遮られた。

嬉しそうに私の手をブンブン振り上げる王女に私は向日葵の仮面を貼り付けて頷く。


「 えぇ、王女様と同じです。 あの花は愛の象徴です、愛されて育った貴女様にピッタリのお花ですね 」

「 とても感動したわ! 嬉しいっ! そんな素敵な由来の花と同じだなんて教えてくれた貴女が大好きよポチ! 」


ギュッと抱きしめて来る王女はいつも素敵な香りがする。 お日様みたいな香り。 だから、吐きそうになる。


「 私も大好きですよ王女様! 」

「 ずっとお友達で居てね! 」


ねぇ、蛇男? そんな温かい笑顔で見てる場合なの? この無邪気で自分勝手で人の気持ちも考えない馬鹿で可愛い王女様はきっといつか貴方の元から羽ばたいて行くかもしれないよ。


「 ラファエルも大好きよ! もう、本当に皆が大好きで仕方ないわ! 」



男と女なんて、何が起きるか分からないのに。


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