第三話
美咲は兵士の助言通り冒険者ギルドの方へ向かおうとしたがふと、自分の格好(=夏物の制服)を見て真っ先に服屋へ向かう事にした
「流石に制服では動けんからな・・・冒険者がいるという事はそれ向けの服も売ってるだろ・・・」
「おい姉ちゃん!何か探してんのか」
ふと周囲に目を向けると屋台の立ち並ぶ区画だったらしい
「(通りでいい匂いがする訳だ)ギルドに登録したいのだが、その前に少し服屋をな・・・店主、そのコーカ鳥の饅頭を一つくれ」
「毎度!冒険者向けのなら右の並びの青い看板の店が、そうじゃねぇなら左の並びの赤い看板の店がいいぜ」
「助かる」
「いいってことよ」
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屋台で買った饅頭を頬張りながら歩くと確かに右の通りに青い看板の服屋があった
「ここか、屋台の店主が言っていた店は」
中には色んな種類の服が並んでいた
「(成る程、鎧のインナーもここで買えるのか)ん?これは・・・」
ふと目を向けた先にあったのは深い瑠璃色の袴で裾には深紅で炎を模した模様の入ったものだった。そしてその隣には漆黒の無地の袴もあった
「生地はそこそこ厚い目でサイズも丁度いい。値段は・・・一着小銀貨一枚か。出せるだけは貰っているが・・・」
因みに只今の美咲の所持金は
小粒金❌2
大銀貨❌5
小銀貨❌8
大銅貨❌20
小銅貨❌40
そして小から大は各種五枚で換金、大から次の小は十枚で換金となる
という結構な小金持ちである。
しかし小粒金は中級貴族以上でもなければ持っておらず、大銀貨も平民の暮らしではほぼ持っている事はなく、精々偶に実力のある冒険者が持っている位であるらしい
「おや、可愛らしいお客さんだね」
「!店主殿か。声も掛けず申し訳ない」
「いいのいいの、その服が欲しいのかい?久し振りのお客さんだし二枚で小銀貨一枚と大銅貨五枚にまけてあげるよ」
「!本当か。なら二枚とも買わせて貰う」
「そろそろ店を畳む予定だったからね。お蔵入りより、誰かに着てもらうほうがその服も嬉しいだろう・・・オマケにこれもあげるよ」
そう言って店主の老婆は少し綻びた袋の様なものを出してきた
「?これは・・・」
「その袋は呪い袋といって生物以外なら何でも入る袋さ。袋の口も大きく開けるし持ち主の魔力次第で幾らでも入る、重さも変わらないから冒険者になるなら持ってお行き」
「!そんないいもの・・・」
「いいんだよ。あんたはあたしの若い頃ソックリじゃ・・・受け取っておくれ」
「・・・ありがたく」
美咲は袴の代金を払い、店主の好意で部屋を借りると瑠璃の袴に着替えた
「あぁ、その服はあんたの長い黒髪によく似合うねぇ」
「あっありがとう」
呪い袋にもう一枚を入れると、袋を懐にしまった
「ではまた」
「感張りなさい」
あれ?ギルドまで辿り着く予定だったのに・・・
次こそ着くはずです!多分・・・